*学校保健における運動器検診
平成28年4月からの「学校保健における運動器検診」の手順に際し、SLOCとして直接の関与はしておりませんが、JCOA会員先生方からの情報を通じ、全国自治体、医師会ならびに各県COAの取組みについて、ブログ形式で随時紹介させていただいております。皆様、忌憚のないご意見をお寄せください。
11. 令和3年度日医ロコモ啓発リーフレット1. JCOA 2. 令和2年度日医学校保健委員会 / ロコモ啓発リーフレット 3. 二戸医師会 4. 岩手西北医師会 5. 栃木県医師会 6. 富田林市医師会 7. 埼玉県医師会 8. 兵庫県 9. 岩手県 10. 長野県千曲医師会
11. 令和3年度版日医学校運動器検診 / ロコモ啓発リーフレット
・2021/03/23
令和3年度日本医師会「学校運動器検診 / ロコモ啓発リーフレット」A4裏表1枚です。
*ご自由にダウンロードの上お使いください。
1. JCOA
子どもロコモ読本 監修 / 林 承弘先生
・2019/03/26
*転載はご遠慮ください。本小冊子ご希望の方は最寄りの整形外科医療機関にご相談ください。
2. 日医学校運動器検診 / ロコモ啓発リーフレット
・2019/02/12
日本医師会「学校運動器検診 / ロコモ啓発リーフレット」A4裏表1枚です。
*ご自由にダウンロードの上お使いください。
(表)
(裏)
運動器検診後整形外科外来受診児童生徒アンケート調査結果
・2018/11/06
運動器検診について −検診までの流れと整形外科医の役割−
・2016/05/10
JCOA FAX NEWS
一般社団法人日本臨床整形外科学会(平成28年05月10日)第2490号抜粋
日臨整第27号
平成28年5月10日
会員 各位
一般社団法人日本臨床整形外科学会
理事長 田辺 秀樹
スポーツ・学校保健委員会
学校保健運動器検診WG
拝啓 時下益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
日頃より、スポーツ・学校保健委員会及び学校保健運動器検診WGの活動にご協力いただき、まことにありがとうございます。さて、今春から学校保健における運動器検診が開始され、すでに児童・生徒が医療機関を受診しているとの情報を得ています。しかし、始まったばかりで「運動器検診の全体像を良く理解できない」という問い合わせが多数寄せられましたので、詳細を記すことにしました。ご一読下さい。
Q−1)運動器検診は誰が行うのか?
A)
1)現在、学校健診を行っている学校医(内科・小児科医が主体。)が、内科検診や側弯症検診と同時に運動器検診を行う。
2)新たに整形外科医が学校医になって、運動器検診を行うわけではない。
3)一部の市町村では整形外科医が学校健診とは別に運動器検診を行うところもある。
Q−2)運動器検診の流れは?
A)
1)検診項目を示した保健調査票を学校から各家庭に配布する。
2)保護者が、保健調査票にチェックまたは記入する。
3)養護教諭は、保健調査票を回収し、その内容をまとめ、検診の際等に、学校医に報告する。
4)学校医は、すべての児童生徒の側弯症検診を行う。
5)学校医は、健診の際、保健調査票の運動器検診にチェックされた項目があれば重点的に検診する。
6)学校医は運動器検診を行い、要整形外科受診、経過観察、異常なしを判定する。
7)学校医が要整形外科受診と認めた場合、養護教諭は保護者に通知する。
8)通知を受け取った保護者は、整形外科を受診する。
9)整形外科受診後の結果を、学校に連絡する。
Q−3)整形外科医の役割は?
A)
1)運動器検診で、整形外科受診を勧められた児童生徒が来院した場合の対応
1 チェックされた項目を確認する。
2 身長・体重も調べておく。
3 チェックされた項目以外も念のため、診察する。(歩行異常の有無、手・肘・肩関節、腰椎前後屈、股・膝・足関節 等)
4 必要に応じて、レントゲン等の検査を行う。
5 診察の結果、異常なし、要経過観察、リハビリテーション、装具治療などの保存治療、脊椎・肩・肘・膝等専門医への紹介、の判断を行う。
2)診察後の報告
診察結果は、児童生徒、保護者に説明するとともに、報告書等を通じて学校に報告する。
3)診察後の指導等
診察の結果、特記すべき異常が認められない場合であっても、受診勧告の理由の多くは運動不足や身体の柔軟性に欠けることに起因すると推測されるので、ゲームやスマホを控えることや外遊びを奨励し、運動等を指導する。
・2015/11/05
JCOAからの提言
JCOA副理事長 新井 貞男
学校保健安全法施行規則の改正に関する文部科学省令により、平成28年4月1日から学校保健における運動器検診が始まることは皆さまご存じのことと思います。この改正に伴い、各県代表を通じて、運動器検診協力医の依頼をJCOA会員各位にお願いしているところです。全容がわかりにくいとの指摘がありますので、日本学校保健会発行の「児童生徒等の運動器検診マニュアル」をもとに概略を説明します。
文科省スポーツ・青少年局学校健康教育課 監修
全体の流れを説明します。
1.保健調査票を保護者に書いてもらい、養護教諭に提出する。
保健調査票は特別の事情がない限り保護者に書いてもらい、養護教諭や担任等が代わりに書かない。
これは、保健調査票を書くことにより運動器に対する関心を保護者に持ってもらうのも運動器検診の目的の一つだからです。
2.養護教諭は、保健調査票と学校での日常の健康観察等の情報を整理する。
3.養護教諭は、この整理した情報を健康診断の際に学校医に伝え、学校医はそれらの情報も参考にして側弯症検診、運動器検診を行う。
4.学校医の視触診等で運動器の異常が疑われる場合は、整形外科専門医を紹介する。
運動器検診協力医とは、「学校健診で指摘された児童生徒が受診に訪れた場合に、自院で診察していただける」整形外科専門医です。今回、先生にはこの運動器協力医になっていただきたくお願いする次第です。
運動器検診では、オーバーユースによる運動器障害だけでなく、片脚立ちが5秒以上できない・しゃがみ込みができないなど、いわゆる体の固い児童生徒も異常として指摘されてきます。その多くは運動不足によるものと思われますが、運動器疾患が隠れている可能性も考えられます。その診察を地域を守る整形外科専門医であるJCOA会員にお願いする次第です。
運動器検診体制を成功させるには、地域を守るJCOA会員の協力が是非とも必要です。
運動器検診後の診察を引き受けてくれる、整形外科専門医がどこにいるか分らないとの指摘が学校関係者からありますので、まずは、各県代表者にお願いし、協力してくれる会員の名簿を日医に提出することにしました。その名簿を核として、協力して下さる勤務医の先生方も追加して行く予定です。引き受け手がいないと学校健診で異常を指摘された児童生徒は医業類似行為者に流れることになりかねません。以上のことを鑑み、是非ともJCOA会員の協力をお願いいたします。
・2015/11/18
運動器検診が導入された背景・目的・意義
平成27年度都道府県医師会 学校保健担当理事連絡協議会
JCOA副理事長 新井貞男
*目的
1)側弯症のチェック
2)運動器過多障害のチェック
・痛みのある子ども:ほとんどがすでに医療機関を受診していると思われ、問題はないと考えます。
・痛みを隠していたり、痛みがなく関節可動域制限のみの子ども:検診でチェックし、すぐに整形外科受診を勧めます。
3)運動しない子どものチェック
運動しない子どもに対し、検診で「体前屈」「片脚立ち5秒」「しゃがみ込み」のチェックをすると、これらができない子どもが、次の①②の二通りに分かれます。両群を検診の段階で判別することは困難です。
①「運動しないために体が固い・バランスが悪い子ども」:いわゆる「子どもロコモ」
②「運動できない子ども」:運動した後で体が痛くなる、だるくなるなどの症状が出るため、運動をしないようにしている。(発育性股関節形成不全、ペルテス病、大腿骨頭すべり症などの疾患が隠れている可能性があります。他の疾患かもしれません。)
通常学校では同じように生活していますので、むしろ両群は一括して抽出される可能性が高いと考えます。林先生は4年間の検診の中で、一つでもできない子ども(体前屈含む)は40%と述べています。(表-1)一方「運動器の10年日本委員会」の運動器検診モデル事業の中間報告では、推定罹患率10%前後と報告しています。(表-2) いずれにしましてもこの子ども達が一斉に整形外科外来を受診しても困ります。そこで検診でチェックされた子どもには、事前に学校現場で体操やストレッチやバランス訓練を充分にやってもらいます。その結果改善されない子どもには「隠れた運動器疾患」を持っている可能性があると考え、そのグループのみを運動器検診協力医に紹介してもらいます。(問題は改善しているかどうかを誰が判断するかです。養護教諭か体育教師か保護者か。そこを今悩んでいるところです。)長島先生案は学校検診前に「運動器検診マニュアル体操」を充分やっておいてもらう。そうすれば検診時までに①の子ども改善されており、また①②の差が校医にもある程度わかり、整形外科受診をすすめる人が減らせるし、改善の有無の判断を校医にお願いできるのでは、というものです。
(表-1)
(表-2)
2. JOA学校保健委員会
*学校での健康診断における運動器検診の開始にあたってのお願い
日本整形外科学会学校保健委員会委員長
古谷 正博
日整会広報室ニュース第104号
平成28年01月15日発行
(転載許可を得ています。)
平成28年度からの学校健康診断において運動器に関して、学校保健安全法施行規則の一部改正により『「四肢の状態」を必須項目として加えるとともに、四肢の状態を検査する際には、四肢の形態及び発育並びに運動器の機能の状態に注意することを規定する』ことが通知されたことはご存知の事と思います。しかしながら、現場での検査の方法等についての解説が記載された「児童生徒等の健康診断マニュアル」の改訂に手間取ったため、学校医、養護教諭等の現場に混乱を生じてしまったことは残念に思っております。本年8月末にマニュアルが発刊されて関係者に配布され、これまでに日本医師会、日本学校保健会で順次研修会が開催され、各郡市学校保健関係者への周知が進んでいるところです。
さて、このマニュアルを確認しますと今回の改訂で、整形外科関連では成長期において早期に発見、適切な治療が行われないと将来に禍根を残す疾患に絞り、チェック項目が作成されています。
例示されたチェック項目は
・背骨が曲がっている。
・腰を曲げたり、反らしたりすると痛みがある。
・上肢に痛みや動きの悪いところがある。
・膝に痛みや動きの悪いところがある。
・片脚立ちが5秒以上できない。
・しゃがみ込みができない。
とされており、具体的な疾患としては脊椎では脊柱側弯症、脊椎分離症、上肢では野球肘、野球肩、股関節・下肢ではPerthes病、大腿骨頭すべり症、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)、Osgood ‐Schlatter病が挙げられています。
また健康診断の流れを見てみると、準備として『家庭における観察の結果、学校に提出される保健調査票の整形外科の項目にチェックがある項目を整理する。日常の健康観察の情報を整理する。可能であるならば、養護教諭は、体育やクラブ活動の担当者と連携し、保健調査票においてチェックがある項目の観察を健康診断前に実施し情報を整理する。』とされており、さらに方法として、『養護教諭は保健調査票、学校での日常の健康観察等の整理された情報を、健康診断の際に学校医に提供する。』とされ、さらに『提供された保健調査等の情報を参考に、側弯症の検査を行う。四肢の状態等については、入室時の姿勢・歩行の状態に注意を払い、伝えられた保健調査でのチェックの有無等により、必要に応じて留意事項を参考に検査を行う。』と記載されています。従いまして、一部で心配されているような家庭でのチェックがそのまま学校医に伝えられるのではなく、身体が硬い、バランスが悪いいわゆる運動器不全の児童生徒に関して、学校内の再チェック、指導も可能と考えられます。
事後措置については、『家庭での保健調査票及び学校での健康観察から総合的に判断し、健康診断実施の上、学校医が必要と認めた児童生徒等については、その結果を保護者に連絡し、速やかに整形外科専門医への受診を勧める。専門医の指示内容を保護者から確認する。指示内容はまとめて記載しておき、今後の指導に役立たせる。』とされています。
さて、今回の運動器検診は内科健診の一部として学校医が行うもので、事後措置として専門医受診を勧められた児童生徒が整形外科医を受診します。その際には、「隠れた運動器疾患」を有する児童生徒のほか、治療の対象でない運動器機能不全であるものも数多く含まれているかと思います。治療の対象でない運動器不全の児童生徒に対しても運動習慣の奨励やストレッチの指導など運動器の専門家としての指導をお願いできればと考えております。
日整会会員の皆様には毎日のご多忙な外来診療の中で誠に恐縮ではありますが、諸般の事情をご賢察いただきご協力をいただきますようお願いいたします。
3. 二戸医師会
平成28年度二戸地区運動器検診マニュアル
・2016/04/01
今年度の主な改定点は下記です。
1)検診項目を日本学校保健会マニュアルにそって簡略化した。
2)保護者,学校が1枚のチェック表に記入し,学校医が判定をし易くした。
3)判定基準を明確にした表を加えた。
4)結果入力フォームを後に統計処理をし易くした。
肥満,体力テストとの関連調査は継続する。
学校保存の保健調査票は,日本学校保健会マニュアルに準じ地区で統一、進学時にこれを申し送る。
児童生徒の運動器に起きている問題と学校運動器検診
<運動器.ロコモってなぁーに>
体の機能を表す器官として消化器、循環器、呼吸器としいう表現があります。これらと同じ様に骨、関節、筋肉、神経など体を支えたり動かしたりする器官の総称を運動器と言います。車に例えるとエンジンやタイヤに相当する大切な体の仕組みのひとつです。
運動器を英語ではロコモティブオルガンと言います。この運動器のどこかに障害が起り、歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態をロコモティブシンドローム(略称.ロコモ・和名.運動器症候群)と呼ぶことを日本整形外科学会が提唱しました。
<児童生徒の運動器の3つの特徴>
1)体を支える骨は、赤ちゃんの頃はほとんど軟骨です。成長につれ固い骨となっていきますが、大人の骨に成るのは、10代後半です。それまでは軟骨が多い状態が続きます。軟骨は傷つきやすく、いったん傷むと修復され難く、特に関節の軟骨が傷むと一生障害が続く可能性があります。
2)成長期の骨は、筋肉や靭帯より早く伸び、その結果筋肉が突っ張り、体が硬くなる時期があり、筋肉が骨に付着する部位で障害が起きやすくなります。
成長期が始まる時期は、性差、個人差があり、同じ年齢でも運動器の発育状態は、同じではありません。子供の体は小さな大人ではないのです。
3)運動機能の発達には、「動作の習得」「持久力」「筋力」が必要ですが、それぞれが発達しやすい年齢があります。特に幼児から小学生は、いろんな動作を習得して、身のこなしを覚える時期で、これを怠るとバランス能力が低く体の固い怪我しやすい体になる可能性があります。(図1・運動器の10年・日本協会監修「大人も知らない体の話し」運動器の話しより引用)
<背を伸ばす3つの習慣>
成長するには、栄養バランスのいい食事をきちんととることが大切です。また体の成長を促す成長ホルモンは、運動と深い眠りで多く分泌されます。子供の時期から、きちんとした食習慣、運動習慣、規則正しい睡眠習慣を身につけることが大切です。
<現在の子ども達に何が起きているか>
こうした子どもの食事や運動など生活の基本は本来、家庭や学校で築かれる筈です。しかし食事面では、核家族化が進み、両親が共働きとなり3食をしっかり食べるという習慣が薄まってきています。また運動面では、ゲームの普及と外遊び場が少なくなったことなどにより、子どもが外で遊ばなくなり、運動不足の子どもが増えています。睡眠も就寝時間が遅くなり不規則となっています。
一方栄養過多・運動不足で太る子だけでなく、低栄養・痩せ過ぎも問題です。メタボに対する誤解もあり痩せることが良いことだとして、骨量を蓄えなければならない小学生高学年にまでダイエットが入りこむようになってきました。こうした状況下危惧されるのは、生活習慣が改善されないまま大人になり、内臓疾患であるメタボや運動器疾患であるロコモの予備軍が増えていくことです。
驚くことに子どもたちの運動器の現状は、片脚でしっかり立つ、手を真っすぐ挙げる、しゃがみ込む、背骨を前屈するなどの基本動作のできていない子が急増しています。そして物を投げる動作ができない、自身の倒立はおろか倒立する子を支えられない、廊下の雑巾がけの際に手で支えられず前歯を折ってしまうなど、少し前の時代には考えられなかったことが起こってきています。
<学校運動器検診>
こうした状況の改善.予防をすべく、来年度から学校健診で運動器検診が必須化されます。二戸地区では、全国に先駆け、今年度から全小中学校で運動器検診を開始しました。検診内容は、体がかたい、バランス能力低下などの運動器機能不全、運動し過ぎによる障害、側弯症の3項目です。まず事前問診票に従い家庭でチェックし、学校でもチェックします。その結果少しでも異常か疑われる生徒児童を学校検診でチェックして、精査が必要な時は2次検診として専門医の受診を勧めています。
<今年度の健診結果>
運動器検診学年: 小学校3年生、5年生 中学校2年生
小学校 3年生 343名 5年生 385名
運動器機能不全 74名(10.2%)
スポーツ障害 11名 (1.5%)
中学校 2年生 411名
運動器機能不全 86名(20.9%)
スポーツ障害 32名(7.7%)
運動器機能不全と肥満の関連
二戸地区は児童生徒の肥満率は、全国、岩手県の平均を大きく上回っています。肥満と運動器発育不全の関連を検討しました。
運動器発育不全の有無から見た肥満児童生徒出現率(%)
小3.小5男女中2男子で割合が高く、体力テストで劣った生徒も同様の傾向でした。
肥満の有無から見た運動器機能不全の児童生徒出現率(%)
小3.小5男女、中2男子で高い割合でした。
肥満と運動器機能不全は、どちらも過食・偏食などの食習慣と運動不足の運動習慣が相まって発生することが考えられます。今回の検診結果から、メタボでかつロコモの可能性がある児童生徒が相当数いる事が分かりました。今後これらに早期に気づき、同時に改善.予防する対策が必要です。
一年1回の検診では、成長過程のからだの異変に対処しきれません。いつも児童生徒のそばにいる家族、学校現場で通年チェックすることで「気づく力・見守る目」を養い、常に目を配ることが大切だと考えます。
図1
4. 岩手西北医師会
「運動器検査項目に関する一考察」
久保谷 康夫
要旨: 運動器検査項目の片脚立ちテストやしゃがみ込み動作は、練習することで大半は可能となるが、特にしゃがみ込み動作は肥満傾向の児童・生徒には困難な場合が多く、肥満対策を構ずるとともに、子どものロコモ対策としてもロコモ啓発等の関係者は運動器検診に積極的に関与すべきと考えられた。
目的: 運動器検診の動作のうち片脚立ち動作としゃがみ込み動作の異常が何に起因するのか、また当該動作の練習効果についての文献的報告が渉猟し得なかったので当該動作の練習効果について調査したので報告する。
対象: 小学校は1年生から6年生までの全児童数が109人と中学1年生131人である。 なお、体調不良等関係から参加人数に整合性を欠く部分がある。
方法: 当該児童・生徒の片脚立ち動作としゃがみ込み動作について、当該動作の練習期間は1週間とした。
結果:
1 片脚立ちテストについて
小学生109人中練習前にできなかったのは1人で、練習後にできなかったのは0人であり、中学1年生120人中練習前にできなかったのは11人で、練習後にはできなかったのは0人だった。
2 しゃがみ込み動作について
・小学生109人中練習前にできなかったのは6人で、練習後も2人ができなかった。できなかった児童はすべて肥満傾向にあった。
・中学1年生118人中練習前にできなかったのは14人で、練習後の123人中でできなかったのは9人だった。 9人中1人は膝関節障害の既往があり、残りの大半は肥満や身体の硬さに起因していた。しかし、完全にはしゃがみ込みができない場合にあっても、しゃがみ込みの練習を重ねることで、動作の改善傾向がみられた。
考察: 片脚立ちテストはバランス能力の異常起因するといわれ、しゃがみ込み動作の異常の理由や起因すべき疾患については、身体の硬さや特に足関節周辺疾患を指摘する報告が見られるが、当該動作を練習をすることによりすなわち運動することにより、改善傾向が見られたが、その原因や対策について考察した報告はなかった。
結語: 肥満解消のためにも運動器検診を通じた運動や体操の必要性が示唆された。また、運動器検診はロコモの認知度向上の一助となることが考えられ、さらに、小児期からのロコモ予防が大切であり、運動器検診に関しては、ロコモ啓発関係者は積極的にかかわるべきと考えられた。
謝辞 本調査は、雫石町立雫石中学校、同安庭小学校、南畑小学校のご協力をいただきました。ここに感謝致します。
<運動器検診予備調査結果>
実 施 日:1回目 12 月 1 日(火) 12 月 2 日(水)
再検査 12 月 8 日(火) 12 月 9 日(水)
注)再検査の表は、1回目でできなかった人の再検査結果を合計した表である。
※女子でしゃがみ込みができない生徒のうち1名は、膝を痛めているとの自己申告があった。
・2015/11/27
【子どものストレッチ】
一般に、身体が硬いのは下肢に問題がある場合が大半なのかもしれませんが、まずは背伸び体操から始め、脊椎の姿勢の改善とストレッチから下肢に移行。下肢は、もっぱら、ハムストリングのストレッチです。
1. 「背伸び体操」
五郎丸の指を組むポーズから、 バンザイで背伸びして5秒キープする。次に、足関節をつま先立ち状態にして同じ動作をする。ロコモでの背伸び体操の類似形です。
2.「肩すぼめ体操」
肩関節周囲のストレッチとして、肩をすぼめる動作を5秒キープする。すぼめて、リラックスさせる。
3.「良い姿勢体操」
肘を90度屈曲、肩を外転90度の位置から上肢を肩外転90度をキープしたままで、バンザイまで持って行く。その際に、上肢が前面に出ない様にする。良い姿勢のためストレッチとして、テレビでやっています。背中を壁につけてやるようです。この亜型もある様ですがとりあえず。
3.「威張りっ子体操」
手指を頚の後ろで組んで、先ずは両上肢を耳に付けた位置にして、次に胸筋を最大限ゆっくりと広げる。肩と肩甲骨と胸筋のストレッチ。頚椎の強化にもなる。
4.「白鳥の体操」
下肢のストレッチ。机を支えにします。しかし机には軽く触る程度。机などの代わりに、誰かと互いに手を組んでもよいかもしれません。片方の下肢は伸展位にして、片方の下肢を後方に伸ばせるだけの所に足先を保持させ、片方の伸展位の膝関節をゆっくりと屈曲させる。最大限30度くらい。膝を屈曲させると下肢筋が痛くなる。また、片方の下肢は伸展位のまま、片方の下肢を上に挙げる。下肢のストレッチ。
5.「ハムストレッチ」
ジャックナイフストレッチの亜型。ジャックナイフはしゃがみ込みで下腿末端を裏面から指で掴む。しかし、そもそも、しゃがみ込みができない子供がいる。私案は、椅子に座ったままで、下腿末端の後面を指で掴む。そこから、椅子からお尻を、できるところまで、浮かせる。ジャックナイフは徳島大学方式で、腰痛治療で、ハムストリングスの拘縮の改善策。これで、脊椎前屈で床に手がつく様になる、とか。
以上のストレッチ体操なら、学校でも自宅でもできます。
・2015/11/26
1.運動器検診と大学・勤務医の関係
学校検診に運動器検診が追加されたが、学校医には開業医が関与している関係から、どうしても大学や勤務医は疎遠になり易いが、三つの点で、運動器検診に関しても大学や勤務医の関心と関与が望まれる。
一つ目は、運動器検診においては、残念ながら、ロコモ予備群が少なからず発見される。
JOAはロコモの認知度向上を学会の大命題にして活動し、目標値の認知度80%は視野に入りつつあるが、認知度と言っても理解度は薄いのが現状であるから、運動器検診を良い機会と捉え、老若男女を問わず、ロコモをアピールすべきと考える。
二つ目は、「運動器」という法令言語である。介護保険法等の改正により、かなり前から、「運動器リハビリ」等の名称が、療養担当規則等に表記はなされてきたが、「学校保健安全法施行規則の一部改正等」という文科省の省令ではあるが、法令用語として、学校検診に「運動器」という言語が単独で認知されたのである。すなわち、JOAは、法令用語である「整形外科学・科」という言語以外にも、運動器という言語を使用してきているが、長年の夢が叶ったのである。ちなみに、JOAは5年前に公益法人に移したが、その際に、当時は法令用語として、単体では認めていなかった「運動器」という言語を、はじめて、定款の「目的」の条文に加えた。これは、当時の理事会執行部からの強い要望で入れたのだが、自慢文表小生のオリジナルである。
三つ目は、運動器検診で異常が指摘される確率に関しては諸説あるが、最低の1割としても、対象者が1,500万人以上に及ぶのだから、150万人が整形外科を受診する可能性も否定できない。これらの対象者をJCOA会員医療機関だけが対応する事になれば、インフルエンザの蔓延の時の対応よりもっとひどい状態が危惧される。それを回避するには、大学や勤務医の理解と協力が不可欠である。互いの助け合いと連携が必須である。
誰かが大きな声で訴えないと上手くいかないのも変な話ではある。そんなのを、運動器機能不全というのだろうか。運動不足を省みず、大層なことを申したことをご容赦いただきたい。
2.片脚立ちテストとしゃがみ込み動作
運動器検診に、片脚立ちテストとしゃがみ込み動作があります。
この動作で異常が発見される確率は、諸兄の報告によれば相当な確率です。
これらの異常児童等が整形外科を受診すると結構難儀です。
では、片脚立ちテストとしゃがみ込み動作は、そんなに異常があるのか?
片脚立ちテストに関しては、SLOCに報告済みですが、うまくできないのは、やり方がよくわからない、教える方も教わる方も。
そこで、
1.特別な指導や説明をせずに、片脚立ちテストとしゃがみ込み動作をさせる。
2. 指導説明、練習をして、1週くらいたって、再度検査する。
3. 片脚立ちテストは机や壁を支えにして練習する。
4.しゃがみ込みは、足先を大きく開くとしゃがみ込みし易くなるので、大股、足先広げるなどのポーズで練習して、徐々に足先を平行にして、再度検査。
当方の小学生と中学一年生100数十名に依頼済みです。過疎化の町で、子供が多くありません。上記の要領で、トライアルにご協力を賜りたく、お願いする次第です。
運動器検診マニュアルビデオ
監修 久保谷 康夫先生
運動器検診マニュアルビデオmp4ファイル(120MB)はこちら
(パスワード iwateseihoku)
ダウンロードの上ご自由にお使いください。
運動器検診マニュアル対応体操
片脚立ちテスト調査に関する一考察
要旨:学校検診における、「片脚立ちテスト」は、トレンデレンブルグ徴候の有無を検査するテストであるが、近年、「子供ロコモ」の徴候としてのバランス感覚・能力あるいは筋力の指標の一つとしても用いられている。
学校保健安全法施行規則などの改正により来年度から、学校検診において、側弯証検診に加えて運動器検診が義務化される。
今回、学校検診に合わせて、児童、学生に片脚立ちテストを行い、調査結果とその考察を試みたので報告する。なお、トレンデレンブルグ徴候の検査としては特記すべき事項はなかった。
小学校(全校児童;29人)と中学1年生(19人)の定期的学校検診時に、はじめに特段の説明をせずに、片脚立ちテストを施行した(最長60秒とした)。 次に、片脚立ちの要領などを説明してから、片脚立ち練習を数分間行った後に、初回テスト時と同一条件で測定した。また、小学生については、初回テスト後、家庭で片脚立ちの練習をし、1週間を経て再度測定した。なお、テストの測定時間は左右の短い時間を採用し、1週間後のテストでは体調不良の児童2名を除外した。
小学生の初回の片脚立ちテストの平均時間は、39.4秒であり、学年による顕著な有意差はなかった。しかし、低学年(特に就学時の1年生)では、静的バランス力が発達途上にあるためかあるいは筋力が備わっていないためか、年長児童に比較して片脚立ちテストの時間は短かった。片脚立ちテストの意義や要領の説明などを経た後の、小学生全員の平均時間は46.7秒であり、初回初測定時間に比較して平均で7.3秒延長していた。小学生に自宅で、遊びの一環として、片脚立ちを1週間練習したのちに、同一条件で測定したところ、初回練習後の測定時間との間に有意差は見られなかった。
中学1年生19人の初回テストでは、12人が目標設定時間をクリアーした。中学1年生では、初回テストで60秒をクリアーできなかった7人のうち、練習後もクリアーできなかったのは、わずかに1人であり、初回3秒の生徒もクリアーできた。
片脚立ちテストをどこで実施するかについては議論のあるところだが、家庭調査票の一つとして、家庭で保護者と同時に施行してはいかがだろうか。また、片脚立ちテストは、測定する側の知識はもとより、子供たちが片脚立ちテストの要領を得ないままに測定すると正確な時間を測定できないことが危惧された。
片脚立ちテストを、家庭で保護者が子供に実演して見せて、その後に測定すれば、子供は片脚立ちテストの要領も理解できるし、正確な時間が測定されると思われる。
なお、「子供ロコモ」における、片脚立ちテストは左右とも最初からふらつかず、しっかり立てるかを見ており、あくまで静的バランスのチェックで、筋力評価ではない。バランスが良ければ、筋力の十分ついてない幼稚園児でも『1時間以上』もできることがあるとされ、片脚立ちは、「静的バランスがしっかりすれば、とっさのケガにも対応できる」といわれている。したがって、練習・訓練では、時間を伸ばすということより、先ず、「20秒間でも、最初からふらつかずにしっかり、立てるようにしましょう」とし、その結果、「1分近くしっかり立てれば上等」ということにしてはいかがだろうか。
ロコモの認知度は、青壮年層で低いと言われているが、家庭などで、片脚立ちテストを保護者が子供と一緒に行うことで、全年齢層の国民へのロコモの啓発ともなり得る可能性があり、国策でもあるロコモの認知度向上のためにも、学校検診の運動器検診の片脚立ちテストを良い機会ととらえるべきと考えた。
本試みは、児童、生徒数も少なく、また「片脚立ちのスタイル」そのものが良く理解できないままに調査したことから、統計的結論には不向きと考えたが、本調査の結果から、片脚立ちテストの正確な時間を測定するには、片脚立ちの仕方や意義をある程度理解させた上で、児童、生徒にテスト・検診を行うことの必要性を感じていただければ望外の喜びである。
謝意;本テストにご協力いただいた、岩手県雫石町立南畑小学校、
同町立雫石中学校に感謝する。
5. 栃木県医師会
・2016/03/09
栃木県医師会ホームページより
長島公之先生/栃木県医医師会常任理事
・「学校における運動器検診の実際」配布資料PDF
・研修会の模様(ビデオ録画)
(参考)
・運動器検診・検診対応体操ビデオ(youtube)
・学校での運動器検診お役立ちコンテンツ(運動器の10年)
・2015/11/18
学校健診での運動器検診を、円滑化(時間や手間を減らす)するには、事前に、運動器検診動作の練習をしておいてもらう必要があると思います。
この検診動作の練習を、体育の授業の準備体操などの中に取り入れてもらって、1,2ヶ月やってもらう。その健診練習が、同時に、体操にもなる。
その際、運動器検診練習(体操)をする前の状態をチェックしておけば、前後を比較することで、
1)体操の効果が評価できる
2)体操で全く改善しないもの、改善はしたが不十分のもの、改善したものなどにグループ分けすることで、事後措置の判断に使える可能性があると思っています。
また、特に年齢が小さい子どもでは、健診のことが理解できないために運動器検診の動作がうまくできない可能性もあり、きちんと評価するためにも、事前の十分な練習が必要になるのではないかと思いました。
・2015/11/03
私の提案で、栃木県医師会の学校保健委員会の中に、運動器検診特別委員会を設置し、昨夜、第一回会議を行いました。委員は、学校保健担当の常任理事(小児科医)、整形外科から、私、自治医大の竹下教授、獨協医大の種市教授、栃木県臨床整形外科医会の小野会長、県教育委員会の担当者でした。 会の冒頭、以下のように、話しました。
——————
学校の運動器検診の意義・目的は運動器疾患の早期発見は勿論だが、それ以外に
・保護者、教諭(部活)、学校医に対し働きかけて、「運動器」への関心を高め、正しい知識を身につけてもらうことで、以下につなげる
1)児童生徒に加え、学校関係者の運動器疾患・障害の発生予防
2)社会全体の将来のロコモ予防
・地域の成長期運動器医療に関する連携の整備と質の向上
2次検診→3次検診のネットワーク、勉強会・症例検討会
——————-
検診の方法は、岩手県西北医師会制作のマニュアルビデオをみせて、参考にしていただきました。
基本的な方針としては、以下のように決まりました。
1)学校(教諭)での1回目のチェックを行う
(練習の時間を作るためには、4月では遅いので、2月か3月に行うか)
2)その後、体育の準備体操などに、検診の動作と同様の体操を入れてもらい、検診の練習を兼ねた体操を行う
3)4月以降、家庭でのチェックを行う
4)学校での2回目のチェックを行う
5)学校医による運動器検診を行う
6)5)にて問題があれば、2次検診の施設(整形外科開業医が中心)に紹介
7)6)にて必要があれば、3次検診の施設(大学病院など)に紹介
8)2次、3次検診施設からの学校への返信を教育員会で集計
9)(可能なら)県教育委員会で、心臓・腎臓検診と同じように、運動器検診を検討する委員会を設置してもらい、集計結果をもとに、今後の検診の内容の検討、学校への提言を行う
6. 富田林市医師会
・2016/03/22
先週、富田林医師会の学校医の先生方に運動器検診について研修会を行いました。
問題のあった子供をどうするかが、一番のポイントでした。
医師会整形外科医4名で事前に検討し、
<検診項目で問題のあった子供に対し、どう対処するか>
問題には運動不足による異常(痛みなし)と痛みを伴う運動器疾患混在しています。
運動不足による異常に対しては、6か月間下記の運動を行い、再度評価を行います。
それでも改善がみられない場合、神経筋疾患、運動器疾患の可能性があるので、整形外科受診を薦めて下さい。
四肢体幹の痛みが、2か月以上続いている場合には学校医健診の際、学校医は結果を確認し、整形外科受診を薦めてください。
10才以上で背中を反らすと痛みを訴える場合、投てき競技をしていて肘をまっすぐ伸ばせない場合、腰椎分離症、野球肘の可能性があり、かつこれらは早期診断早期治療が必要ですので、整形外科受診を薦めてください。
<6か月後、どのレベルの異常で整形外科受診させるのか>
片脚立ち、ケンケン:小学校3年生以上でできない場合
小2以下の子供は、来年できるよう頑張るように言う
前屈:指先が膝までも届かない場合
しゃがみこみ:大腿が水平になるレベルまでもしゃがみこめない場合
腕挙上:150°以下の場合
各動作による痛みがまだ続いている場合
というように決めました。
受診してもらった時、何らかの異常がありそうなケースに絞りました。
富田林医師会の場合は、過去に経験がなく、ぶっつけ本番です。
どうなるか心配ですが、その都度修正していこうと思っています。
・2016/02/15
02/03に富田林市で教育委員会と連携し、幼稚園、小中学校の養護教諭、体育担当教諭を対象に運動器健診の方法と運動器機能改善策についての説明会を行いました。
近隣市町村の担当者や高校の担当者も数人参加してくださり、総勢100余名の参加がありました。
教諭は熱心に聞いてくれました。一緒に運動もしました。
学校で予め検診することに異論などありませんでした。
・2016/01/25
「運動器検診マニュアル」と「自宅問診票」を学校医用・教師用に分け、PDFで掲載しました。ご自由にご使用ください。
1)富田林市医師会学校医用
1.H28年度学校運動器検診についてPDF
2)教諭(担任・体育教諭・養護教諭)用
1.H28年度学校運動器検診についてPDF
・2015/11/18
富田林医師会学校医部会委員会では、学校医の先生方から”内科検診だけで手いっぱい、よく知らない運動器検診を行うことは無理”と宣言されており、内科小児科の先生に一切迷惑かけない方法を考えました。
結核検診が、”1カ月以上咳が続いているか、通院しているところがあるか”家庭に問診して、その結果をみて学校医は咳の状況を確認し、通院してなかったら受診するように勧めるだけですので、運動器検診も予め、問診と学校での運動器チェックを行ってもらい、異常の出た子供に次の指示を出すだけにしました。
・運動器の痛みがあり、整形外科に受診していない子供は受診を勧める。
・単に運動器機能不全の子供には予め教師に指示をした運動プログラムを体育の初めに取り入れて、全員で行う。
・3-6カ月後再検し、改善が見られない場合、整形外科疾患や神経筋疾患が隠れている可能性があるので整形外科受診を勧める。
今日教育委員会の方と運動器検診について話してきました。
先日教育委員会向けの説明会があったそうで、検診という言葉から病気を見つけることを目的と考えられていました。
・オスグッド、野球肘、分離症等
夏に、学校内で事前に運動器検診を行いその結果を学校医に示して欲しいと依頼し検討をお願いしていましたが、運動器疾患を見つけることが目的と考え、実施者を養護教諭で準備しかけていました。
志田原先生のお考え(注1)のように私も ” 運動器検診はいわゆる子供のロコモ、運動能力(筋力やバランス感覚)の低下、を中心に診るのだと思っていました”ので、
・運動器検診は、体育を教える先生にして頂きたいこと
・問題とされる子供は、単に運動不足からの運動器不全と整形外科疾患とが混在していること
・単に運動不足からの運動器不全が圧倒的に多いこと
・単に運動不足からの運動器不全の子供たちに、改善プログラムを行ってもらい(する時は全員でしますが)、運動苦手意識を克服することが目的であること
・毎年確認して、単に運動不足からの運動器不全の子供たちの割合が減ることが目的であることなど説明してきました。
3-6カ月後の判定の仕方について質問されました。
・幼稚園から中学生まで同じ基準でいいのか、1つでも異常があれば、受診させるのか
この件で、先生方にご指導頂きたいのですが、埼玉県のデータでは(注2)
・片脚立ち5秒できない幼稚園児、就学時の子供の割合が25%越えています
・ 腰椎前屈で指先が床につかない 小5、中学生の割合が25%越えています
年少者では片脚立ち、年長者では前屈で数カ月後の検診でも引っかかる子供が多くいると思います。
3-6カ月後の判定時に、年少者では片脚立ち、年長者では前屈を除くとしていいか否か異常を判定すれば、年少者では片脚立ち、年長者では前屈出来ない子供が多数整形外科に行くことになると思います。年少者で片脚立ち出来ない子供の中には、神経筋疾患が隠れていることもあるので悩むところです。
3学期中に各校から2-3名参加してもらい、私が運動器検診のやり方、改善プログラムのやり方の講習会を行う準備を進めることとしました。
長島先生のおっしゃるように” 学校医の検診前に、検診対応体操をさせておくことで、異常あり(検診する対象)を減らしてしまおう”は、いい案と思います。
運動音痴が増えた現在、体育を教える先生もどうしたらいいのか悩んでいます。
基本的なバランス、柔軟性、必要な筋力が伴っていないので運動ができない子供も多いので、検診内容の基本的な動きを繰り返すだけで、引っかかる子供も減るでしょう。
色々な方々と話をしていると、それぞれの立場で考えられていることが異なります。
私も、頭の中で考えているだけで実行したら問題点も見つかってくることでしょう。
何度か教育委員会の方々、現場の方々と相談し、研修を行って頂き、4月に間に合うようにしようと思います。その都度、経過報告します。
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(注1)志田原泰夫委員 福山市
SLOCのHPで宮田先生が紹介されている富田林方式なら学校医や整形外科医の負担はかなり少なくなりそうですが、行政としてはどこまで簡略化して良いのか、簡略化による見落としがあったときの責任問題はどうするのか等が心配なようです。国からは地方の実情に応じてやりなさいというだけで具体的な指示はないそうです。
もう少し学校医と市中整形外科医の負担が軽くなるような方法をJCOAやJOAが示さないと現場が混乱に陥ると思います。
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(注2)林承弘先生
埼玉県学校運動器検診で 幼稚園~中学まで運動器機能不全を学年全体(1343名)でみると 片脚立ち・しゃがみ込みに問題あるもののうち、一番頻度が高いのは、体前屈 23%であり、 次いで片脚立ち・しゃがみ込みが 15%前後、上肢垂直拳上が 7%であり、これら一つでも問 題あるものは、実に 40%強でした。
幼稚園~中学まで学年別にみると、 片脚立ちは、学年が上がるにつれ静的バランスがしっかりしてきて、ふらつきは改善します。但し、中学でもふらつく子が 7~8%います。一方、しゃがみ込みや体前屈は学年が上が るにつれ、出来ない子が増え、かたさが増します。また上肢垂直拳上は、学年を通じて出 来ない子が数%にみられました。結局、これらが一つでも出来ない子は、4 割を占めました。 これら子どもの体の異変の背景に、社会的要因があると考えます。
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・2015/09/08
富田林市内に整形外科診療所は4件しかなく、運動器検診で異常があったからと言って受診を勧められたらパニックになります。
市教育委員会と協議し、運動器検診の事前チェックを担任または体育教員にしてもらい(家庭用チェックも行います)対策も体育授業で行ってもらえることになりました。
*運動器検診での異常を2つに分けました。
・1つ目が痛みを伴う運動器疾患、側わんしょう等で 通院していない場合受診を勧める。
・2つ目が運動能力の問題(体が固い、バランスが悪い等)で、これらに対しては運動プログラムを作成し、学校の体育で行ってもらう。
3か月行って評価を行い、改善が見られない場合、運動器疾患や神経疾患が見逃されている場合があるので受診を勧めるという作戦です。
生徒の検診結果もまとめてもらうようにお願いしました。
運動をすることによってどれくらい改善するのか、データーが出せると面白いです。
運動内容は、学校の先生方に予め伝えているので、学校医の先生は”運動して下さい”と言うだけでいいようにしました。
検診内容も若干変えています。
教育委員会と連携取れればうまくいくと思います。
養護の先生に対して一昨年 子どもとロコモの話をしたのですが、その内容は校長や体育の先生方には伝わりませんでした。
学校全体で動くには、教育委員会からのお達しが効果的と思い、打ち合わせしています。
7. 埼玉県医師会の取組み
・2016/02/29
「運動器検診手順最終結果」が出ましたので掲載します。
ご自由にご使用ください。
5.子ども処方箋
・2015/11/18
埼玉県の運動器検診の流れに関する現時点での教育委員会および養護教諭等との打合せ結果です。
子どもとロコモ保存版PPT計86枚(解説付き)はこちら
学校の運動器検診でスクリーニングされた子が来院したときどう対応するか
監修・解説:林整形外科 林 承弘
日医ウェブサイト(Med safe. Net)【最新動向】より
・2016/03/29
学校健診において運動器検診が2016年度から必須化される。対象は小学1年生から高校3年生までの全学年だ。内科健診に付随して従来から実施されている「脊柱側弯症」とは別に「四肢の状態」のチェックも加わる。オーバーユースによる運動器障害(スポーツ障害)はもちろん、姿勢不良・運動不足による運動器機能不全の状態にある子、いわゆる「子どもロコモ」の抽出も行なわれるのがトピックだ。すでに地域の医師会から打診を受け、検診でスクリーニングされた生徒の受診を受け入れる「運動器検診協力医」として登録を済ませ、日本学校保健会や日本医師会および地区医師会が主催する研修会に参加した整形外科医も多いはずだ。だが検査の方法等が解説されている『児童生徒等の健康診断マニュアル』改訂版の発刊が遅れたことも含め、「子どもの運動器の疾患や機能不全の理解が、保護者や養護教諭、保健体育教諭、内科医主体の校医は言うにおよばず、受診を担当する当の整形外科医にも浸透していないのが現状。 運動器検診は多くの地域が手探り状態でのスタートになる」と、埼玉県にて運動器検診モデル事業を担当した林承弘医師は言う。「送られて来る生徒の中には、明らかな運動器疾患や障害を持ち、治療を要する者がいます。隠れた運動器疾患を持つ子どもがいる可能性もある。すぐには治療の対象にはならないものの、今運動器機能の回復をはからないと将来的に重大な障害や二次的なケガにつながる運動器機能不全の子も多数いる」学校健診は4~5月に集中する。その子らが来院したらどのような点に留意して診察すればよいか、ポイントを林医師に聞いた。
(企画・取材:黒木要)
1.学校の運動器検診でスクリーニングされた子が来院したときどう対応するか
2.スクリーニングされる運動器の疾患と機能不全(子どもロコモ)
3.運動器検診の中身と流れ
4.受診勧告を受けた子を診るとき留意すべきこと
http://www.medsafe.net/recent/166locomo.html
視点:姿勢と子どもロコモ
平成28年4月から学校運動器検診が始まります。各地域でさまざまな取組みが行われているものと思います。運動器疾患の検出にとどまらず、子どもロコモをひきおこす生活習慣をいかに改善できるかが大きな課題です。学校だけでなく、家庭を巻き込むことが本来あるべき対策と考えます。子どもロコモの根源は、姿勢にあります。姿勢を良くし、肩甲骨周りを柔らかくし、股関節を上手く使えれば、子どもロコモの7~8割が改善します。
姿勢は日常生活そのものであり、家庭の協力が必要です。学校健診では、保健調査票でまず、保護者のチェックがあります。その後、養護教諭のチェック、校医の判断を経て、問題のある児童生徒が専門医である整形外科医に回される、という段取りとなります。
姿勢が子どもロコモに大いに関係することを整形外科医がしっかり理解し、学校健診に先立ち、その対策も含めて保護者や養護教諭等に伝えることができれば現場は安心できます。運動器検診導入にあたり、整形外科医の果たす役割は極めて大きいと思います。
ついこの前まで「運動器」という言葉すら認知されていませんでしたが、ロコモという概念が生まれてから運動器という言葉の定着に弾みがつき、また運動器検診導入に向けた関係各位の並々ならないご尽力もあって、運動器検診が学校健診に取り入れられました。このチャンスを生かすことができなければ、整形外科医の未来はないともいえます。(平成27年11月21日/JCOAニュースH.28 01月号掲載予定)
8. 兵庫県
・2015/11/26
平成27年度 児童生徒の健康診断マニュアル改定に関する研修会
ー特に運動器検診についてー
兵庫県医師会理事(学校保健担当)大森 英夫
・2015/11/18
以下が、現状です。3つの、取り組みが同時進行中です。1,2,3とも、今は少し流動的ですが、
近々、方向が確定したら、報告します。
1.加古川地区のとりくみ
→側彎検診を発展させた形での、整形外科医が学校に出向いての運動器直接検診をする方向
→今来年度予算が付くかの返事待ち(先週、市長、副市長に直接のお願い)
2.県整形外科医会としてのとりくみ
→学校検診での異常者を「専門医受診」させる場合の協力医療機関の整備
(医療機関の名簿作成と医療機関への事後処置のマニュアルの配布)
(マニュアルは、現在、検討中)
*「二次検診」ではなく「専門医受診」と呼ぶようにする。
「専門医受診」を「保険診療を利用した整形外科医への受診」と説明する予定。
「専門医受診」の際の病名の付け方については議論中。
3.県医師会・学校保健委員会としてのとりくみ
→担当理事(内科)と連携し、兵庫県としての方針の提示する方向
11/26に県下の学校保健関係者を集めて、説明会開催予定
県の方針として
従来の家庭調査票+運動器検診調査票を全学年に配布
異常のチエックのあった児童生徒を、養護教諭が校医に診せる(直接検診している地域以外)
・校医の判断で「専門医受診の症例」という方向になりそうです。
9. 岩手県
JCOAスポーツ学校保健委員
ICOAスポーツ学校保健委員委員長
菅 義行
・2016/10/06
岩手県臨床整形外科医会(以下「ICOA」)の運動器検診に対する取組みの経緯等について、第28回 東北地区学校保健・学校医大会(山形県医師会主宰:山形市:平成28月9月10日)において、『「岩手県の運動器検診への取り組み」整形外科医の立場から』のタイトルで発表したので、その概要を報告します。
・2015/11/24
岩手県教育委員会と岩手県臨床整形外科医会との協議が、10.21、11.18にありましたので報告します。
1.運動器検診についての研修会等の開催について
H26.10.03 県学校保健講習会(養護教諭、保健担当教諭対象)
H27.01.16 県臨床整形外科医会研修会(整形外科医対象)
H27.01.17 県学校保健・学校医大会(学校医、養護教諭対象)
2.県教委、県医師会から運動器検診に対する協力依頼等について
県教委から県医師会を通して各郡市医師会の整形外科医へ運動器検診の協力通知整形外科医を含めた委員会の体制づくりの依頼があった。ちなみに岩手COA会員64名(回答率100%)の中、協力医は61名(95%)の体制を整えている。
3.保健調査票は「児童生徒等の健康診断マニュアル(以下マニュアル)」の6項目について、県内市町村の教育委員会(教委)へ通知、指導を依頼した。
*児童生徒等の健康診断マニュアル平成27年度改訂版
文科省スポーツ・青少年局学校健康教育課 監修
4.学校医の判定に対するフローチャートについて(マニュアルP.16)
1)以下の場合には、整形外科専門医受診を勧める。
「39」背骨が曲がっている(脊柱側弯症疑い)
「40」腰を曲げたり、反らしたりすると痛み(腰椎分離症疑い等)がある。
「41」腕、脚を動かすと痛みがある。
「42」腕、脚に動きが悪いところがある。
2)以下の2項目(運動器機能不全)については、専門医受診の結論がでなかったが、以下に示す案が出た。
「43」片脚立ちが5秒以上できない(バランスが悪い、股関節疾患)場合
「44」しゃがみこみができない(下肢の関節がかたいなど)場合
① 養護教諭 担任、体育教諭が日常の情報を整理して学校医へ (マニュアルP.18)
・県教委、市町村教委、学校長からの指示を出してもらう。(学校現場からの声)
② 健康診断前に、しゃがみこみ、片脚立ちの練習を学校・家庭で行ってほしい
・「43」「44」の対策に体育の準備体操、授業前などに練習をしてもらい、慣れてもらうことでチェックがつく人数を絞り込みしたい。(学校医からの要望)
・学校現場が運動器検診に対して不安が多いので、県教委から運動指導するための資料をできる限り早くほしい。
例1.岩手西北医師会HPのビデオを紹介
例2.ストレッチ・バランス練習指導案(県体協、県教委)の作成依頼
(JCOA、JOAからのモデル資料がいつできるか不明)
③ 学校医の判定「43」「44」のチェックがあり できない児童・生徒へ。
・ 跛行、歩き方がおかしい ⇒ 学校医が整形外科疾患を疑う⇒ 整形外科専門医
・ 発達障害 知的障害者等 ⇒ それぞれの専門領域
・ 肥満傾向(小児習慣病) ⇒ 学校医の判断
・ 運動不足のようだ ⇒ 学校医が「指導」として検診後の運動指導などを学校、家庭で行ってもらう
<課題>
・指導をどのくらいの期間するのか?
・学校医が経過観察を指示してできない時は整形外科専門医へ紹介案を示すが、学校(養護教諭、担任、体育教諭)は責任問題があり 学校の判定はできないという説明(県教委、学校現場)
・家庭で判断できないだろうか
④ 家庭で判断について
県教委より学校医の判定に「経過観察」して改善しない時は 家庭で判断して整形外科専門医の受診方法があるとのことで県教委から市町村教育委員会への指導をお願いした。
たとえば各家庭へ、アレルギー性鼻炎が治らない時は専門医へ。
ただし、「しゃがめない、片脚立ちができない」が病気なの分からない家庭が多いと考えられ、「股関節・膝関節・足関節疾患等があることがあるので整形外科専門医を受診して下さい」と勧める啓発内容を添付する通知もお願いした。さらに、今後も市町村によって医療体制が異なり 対応方法を検討していくこと
5.整形外科専門医としての受け入れ体制について
学校医が整形外科疾患を疑い、運動器機能不全の児童生徒等は、整形外科専門医の医療機関で全員受診を受け、診察、指導できる体制づくりをしていく。さらに、受診した児童生徒等について集計、分析してフィードバック体制も整えていく予定である。
岩手県学校保健・学校医大会 2018.01.16 久保谷 康夫
JCOAの運動器検診の受診調査結果を引用して、運動器検診とロコモと題した講演にしました。(「受診勧告児童・生徒等の実態調査」は日本運動器科学会研究費対象事業)
しかし、調査結果のデータを検証すると、子供の時の運動器の不都合つまり、子どもロコモが、将来のロコモにリンクしているのかは結論がでませんでした。
個別には、昨年度の調査結果では、スマホなどのうち遊びと運動器の不都合に相関は見られませんでしたが、今回は腰痛との相関が見られました。
しゃがみ込み出来ないは、昨年度調査結果では、肥満との相関だけでしたが、今年度の結果から、運動時間との相関が見られたのは驚きでした。
60度を超える側湾症が発見されましたが、余り強調すると騒動になるので、簡単に触れる事にしました。
講演会会場入口のロビーには、小学生低学年向けの、運動器の説明の動画を流してくれる事になりました。
10. 長野県千曲医師会
二階堂 元重
・2016/04/01
平成28年度千曲医師会整形外科学校医運動器検診(一次検診)手順.PDF
・2016/03/11
平成28年度千曲医師会運動器検診手順(案)
千曲医師会 二階堂 元重
平成28年03月09日午後07時
坂城町A中学校
(出席者)
坂城町
A中校長
B小校長
A町教育委員会教育文化課学校教育係
A中養護教諭
B小養護教諭
C小養護教諭
D小養護教諭
千曲医師会管轄小中学校における平成28年度運動器検診は、行政・学校・医師会それぞれの理解、準備が不十分なまま4月からのスタートを迎えます。千曲医師会では、煩雑を極めると容易に推測される初年度検診の流れを円滑に進めるために、文科省・日本整形外科学会の方針を軸に、可能な限り簡便な手順を策定しました。
(1)骨子
「学校での健康診断における運動器検診の開始にあたってのお願い」抜粋
(資料1/日整会広報室ニュース第104号)
1.今回の運動器検診は内科健診の一部として学校医が行うもので、事後措置として専門医受診を勧められた児童生徒が整形外科医を受診する。
➡︎小5・中2以外の学年への対応
*千曲医師会では小5・中2に特化し、整形外科学校医が一次検診を行う。
2.その際には、「隠れた運動器疾患」を有する児童生徒のほか、治療の対象でない運動器機能不全であるものも数多く含まれている可能性がある。治療の対象でない運動器不全の児童生徒に対しても運動習慣の奨励やストレッチの指導など運動器の専門家としての指導をお願いできればと考えている。身体が硬い、バランスが悪いいわゆる運動器不全の児童生徒に関して、学校内の再チェック、指導も可能と考えられる。
➡︎「子どもロコモ」への運動プログラムの介入
3.養護教諭は、体育やクラブ活動の担当者と連携し、保健調査票においてチェックがある項目の観察を健康診断前に実施し情報を整理する。
➡︎検診前チェック
4.チェック項目は以下6項目に限定する。
・背骨が曲がっている。
・腰を曲げたり、反らしたりすると痛みがある。
・上肢に痛みや動きの悪いところがある。
・膝に痛みや動きの悪いところがある。
・片脚立ちが5秒以上できない。
・しゃがみ込みができない。
ⅰ ) 保健調査票はこちら
ⅱ ) 運動器検診調査票はこちら
(2)タイムスケジュール
04月
新学期初日 「保健調査票」「運動器検診調査票」の配布>回収>養護教諭による確認、抽出
中旬 各学校校長講話(初回父兄参観日)の中で「運動器検診」「運動プログラム」実施の件をアナウンス
➡︎運動プログラムの介入
*運動プログラム
(目的)
・治療対象でない運動器機能不全(子どもロコモ)への対応
・①②不可該当者群の70%改善をめざす
(方法)
・全学年全員体育授業冒頭に体育教諭指導のもと実施(3~6ヶ月)
①片脚立ち(左右ともに30秒>慣れたら1分まで)
②しゃがみ込み
【内科学校医健康診断】
A中 04/11・04/13・04/18
B小 05/17・06/07・06/14
C小 05/26・06/06
D小 05/18・06/07・06/20
・「保健調査票」チェック6項目確認
1)背骨が曲がっている
2)腰を曲げたり、反らしたりすると痛みがある
3)腕・脚を動かすと痛みがある
4)腕・脚に動きの悪いところがある
5)片脚立ちが5秒以上できない
6)しゃがみ込みができない
a)1)~4)にチェックのある者で医療機関受診していない者は連絡票に記入、学校名で通知の上整形外科受診へ
b)チェックのない者・専門医受診している者・ならびに5)6)にチェックがある者はスルー
【平成28年度整形外科学校医運動器検診(小5・中2)】
A中 06/23・06/30
B小 06/29
C小 06/15
D小 06/22
・「保健調査票」「運動器検診調査票」チェック項目確認
a)1)~6)にチェックのある者
・下肢の検診 ①片脚立ち左右5秒づつ ②しゃがみ込み
・上肢の検診 ③肩挙上(屈曲180°)④肘屈伸(肩屈曲90° 掌を上に)
・脊柱の検診 ⑤体前屈・後屈 ⑥側弯症検診(後>前)
b)チェックのない者
⑥側弯症検診(後>前)のみ
必要に応じて連絡票(運動器検診結果のお知らせ)に記入、通知の上整形外科受診へ
(3)学校は受診結果を確認し、記録、保管する(事後措置)
できれば紙ベースではなく「電子データ」で
@注意点
1.保護者には運動器検診の意義を事前充分に説明し、「保健調査票」は保護者責任の上記載と規定された公文書であることを周知させ、協力を依頼する。チェック項目は家庭で一緒にやることで問題意識を共有し、できない場合は家庭内でも日々練習させる。
2.「運動プログラム」実施期間が3ヶ月に満たないことで、初年度運動器検診日までに「介入効果の判定」はできないが、当日片脚立ち・しゃがみ込み改善の程度の観察は可能である。
3.運動器検診に際し、男子は上半身裸・裸足・短パン着用。女子は水着(ワンピース・セパレートタイプいずれも可)
・裸足・短パン着用。
2015.03.07
「運動プログラム」について
①片脚立ち」②しゃがみ込み」成功の秘訣は
1.背すじを伸ばす
2.足指から足裏全体に体重をのせるの2点です。
練習すればできるようになります。
特に高学年には③体前屈も取り入れてください。
④のびのび体操(立位編)は以下の目的を全て達成させる極めて合理的なトレーニング法です。
・姿勢矯正(背すじを伸ばす・骨盤を立てる)
・つま先で床をつかみ全体重を支える(浮き指対策)
・バランス力をつける
・肩甲骨、上肢、手関節を柔らかくする
・胸郭、肋間を広げることで、呼吸器・循環器・消化器の
活動を促進する
(資料−1)
「運動プログラム①~④」Youtube動画
(資料−2)
1.のびのび体操(立位編).mp4
(資料−3)
・「運動器検診結果のお知らせ」WordFile
・「運動器検診結果のお知らせ」PDF
・2016/03/02
千曲市更埴庁舎において運動器検診に関する研修会が開催されました。
平成28年03月02日午後7時
運動器検診に関する研修会
千曲市更埴庁舎
講師:医療法人二階堂医院 二階堂 元重
参加者総数62名
今回「整形外科学校医制」が予算成立した坂城町も研修会に参加しました。
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【坂城町】
1.人口 1万7,000人
2.児童生徒数 1,250人(小学生837人・中学生413人)
3.小学校3校・中学校1校
4.運動器検診整形外科学校医:二階堂 元重
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・運動器検診手順(案)PDF
・運動器機能不全についてPPT101枚
・2016/02/01
01月27日千曲市教育委員会主催で「第1回運動器検診検討会」が開催されました。
千曲医師会では、従来の側弯症検診を含め、運動器検診を一塊として整形外科医に委託することが理事会決議され、これに対し市が新たに「運動器検診に特化した学校医」として予算組みした格好です。
検診実施期間が04月01日以降06月30日までと定められており、現在行政・学校側・医師会・そして我々整形外科医それぞれの思惑が交錯しながらも必死に落とし所を模索中ですが、前途多難な状況といえます。とりあえず次年度は従来の側弯症検診に準じた現行スタイルでスタートするのではと考えています。
千曲医師会は、運動器検診実施方法について県医師会より「内科の学校医が引き受けるのではなく、より専門性の高い整形外科の先生にお願いするのが望ましい。」との見解から、千曲市教育委員会との合議の結果、平成28年度より千曲市内13の小中学校各校に対し、従来の側弯症検診を含めた運動器検診を行う「整形外科医の学校医」を新たに配置する予算」が確保されることになった。
なお千曲医師会坂城地区に関しては(行政区分は埴科郡坂城町)今回行政決定はなされず、来年度は現行通り本来の学校医が運動器一次検診を行うことになった。
【千曲市】
1.人口 6万4,000人
2.児童生徒数 5,034人(小学生3,264人・中学生1,770人)
3.小学校9校・中学校4校
4.運動器検診参加予定整形外科医:6施設7名
5.千曲市教育委員会実施手順(案)
6.以下二階堂私案です。(二戸市・八戸市・栃木県・埼玉県取組みを参考にしています。)
1)検診該当学年
2)他学年(調査票全員分を確認の上、抽出群を一次検診)
*保健調査票(問診票)の家庭配布
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・背骨が曲がっている。
・腰を曲げたり、反らしたりすると痛みがある。
・腕、脚を動かすとに痛みがある。
・腕、脚に膝に動きの悪いところがある。
・片脚立ちが5秒以上できない。
・しゃがみ込みができない。
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>各家庭でチェック。(保護者)
>回収し「運動器検診該当者(チェックが一つ以上つく者)」を抽出。(養護教諭)
@全児童の約10%
>体育の授業開始時に全員で「運動プログラム(問診票に沿った体操中心)」実施。(体育教諭)
*「運動習慣の奨励・ストレッチの指導」により治療の対象でない運動器機能不全(子どもロコモ)に対処する。
>3ヶ月後学校で再度評価。(担任or保護者)
>再評価で改善がみられない群を抽出。(養護教諭)
@全児童の約2~3%
①運動器の痛みがあって整形外科受診していない群
②側弯症チェックのある群
②再評価で改善のみられない群(次年度以降母集団数の減少が期待できる。)
>以上の群を整形外科医による運動器一次検診に加える。
平成28年度坂城町学校運動器検診 2016.06.15~06.30
坂城町運動器検診学校医 二階堂 元重
(要旨)
1.平成28年06月15日から06月30日まで、長野県埴科郡坂城町の小中学校(3小学校・1中学校)の小学5年生計132名、中学2年生142名に対し、学校運動器一次検診を行った。
2.検診は文科省監修「児童生徒等の健康診断マニュアル」に則り、事前保護者記入の「保健調査票」ならびに「運動器検診調査票」をもとに、手順は埼玉県医師会作成のガイドラインに沿って行った。
3.検診に費やした時間は1人平均約1分であった。
4.「運動機能不全」チェック5項目に一つでもあてはまる児童生徒は、小5で15%、中2で18%であった。
5.「片脚立ち」「肩挙上」不可該当者は小中ともに皆無であった。坂城町では4月新学期より全ての小中学校で、体育授業冒頭「運動プログラム」(片脚立ち・しゃがみ込み・体前屈・のびのび体操)を実施している。
6.専門医受診指示後、実際に整形外科受診した児童生徒は小中ともにほぼ半数であった。
7.いわゆる「ねこ背・あご出し・骨盤後傾」の姿勢不良を示す児童生徒は、小5で5人に1人、中2では4人に1人みられた。彼らの多くはその場での「のびのび体操」指導で一時的ではあるが姿勢が改善している。
1.体育活動
・中学2年 142名(男子76/女子66)
・小学5年 132名(3校合計 男子63/女子69)
女子:小・中ともにほぼ半数は体育活動を行っていない。
男子:小・中ともに4分の1はサッカー。中学はサッカー・テニスで約半数を占める。中学男子の95%は体育活動を行っている。
2.運動器機能不全(子どもロコモ)例
(1)小学5年
・側弯症疑いを含む「姿勢不良」が約20%。「のびのび体操」指導を行った。
・「子どもロコモ」チェック項目中、「体前屈」9%「しゃがみ込み」6%、「片脚立ち」「肩挙上」は 全員可能であった。どれか一つでもできない者は全体の15%であった。
(2)中学2年
・側弯症疑いを含む「姿勢不良」が約27%であった。
・「子どもロコモ」チェック項目中、「体前屈」8%「しゃがみ込み」14%、「片脚立ち」「肩挙上」は 全員可能であった。どれか一つでもできない者は全体の18%であった。
3.体育活動と運動器機能不全
(1)しゃがみ込み・体前屈
小5:「しゃがみ込み」「体前屈」ともに「体育活動あり・なし」が丁度半数づつであった。
中2:「体前屈」は半数づつ、「しゃがみ込み」ではサッカー・テニス・体育活動なしが同数20%づつであった。サッカー・テニスは当中学では最も力を入れて取組む代表的な部活動である。
(2)姿勢不良(側弯症疑い含む)
姿勢不良、すなわち「ねこ背・あご出し・骨盤後傾」の児童・生徒についてもほぼ同様の結果である。中2では「体育活動なし」とテニスで6割を占めていた。
(3)事前調査票に保護者が「異常あり」と記入した児童/生徒
小5では11% 14名、 中2では30% 42名であった。
4.専門医受診
(1)小学5年
専門医受診指示は4名。全員が側弯症疑い。4名とも保護者事前チェックはなかった。うち2名が当院受診。1名がCobb11°、1名が5°以下、両名1年後再受診とした。
(2)中学2年
専門医受診指示は16名。15名が側弯症疑い。1名が外骨腫による肘関節拘縮疑いであった。16名中7名に保護者事前チェックを認めた。半数8名が専門医受診。うち3名が側弯症の診断(全て他医)。1名が3か月後、1名が6か月後再受診、1名が経過観察という回答であった。残り5名は正常範囲。いわゆる姿勢不良による「機能的側弯症」と判断した。
5.事前調査票「痛み/運動制限」にチェックがあった児童・生徒
小5:1名。腰痛。体育活動をしないObesity男子であった。
中2:24名。うち22名は体育活動を行っている。半数以上が腰痛。種目はサッカー・テニスで6割を占めていた。
(考察)
1.基本動作チェック項目中一つでもできないものの割合は小5で15%、中2で18%と埼玉県のデータ40%を大きく下回る結果であった。理由として4月新学期と同時に体育授業前に運動プログラム(しゃがみ込み・片脚立ち・体前屈・のびのび体操)実施を励行しているためかと思われた。実際に「片脚立ち」「肩挙上」は小5・中2を通じ全員が可能であった。更に「片脚立ち」に関しては、デンバーⅡ発達判定法に則り、小学校高学年までには「静的バランス」が確立していることを裏付ける結果である。
2.「子どもロコモ」の背景は、運動のやり過ぎによるスポーツ障害と、食べ過ぎによる肥満など生活習慣の乱れから来る運動不足の二極化が問題になっているが、「しゃがみ込み」不可群ではこれを裏付ける結果となっていた。「痛み・運動制限」にチェックをつけた生徒も、中学の代表的部活動であるサッカー・テニスで全体の6割を占めていた。
3.一次検診の結果、側弯症の疑いで専門医受診を指示し、実際に受診した児童生徒が小中学校ともに約半数。受診を指示した子どもの事前調査票のチェックをみると、小5では4名中全てチェックなし、中2では15名中7名と、今後保護者への更なる啓発が必要かと思われた。
また小5では5人に1人、中2では4人に1人「ねこ背・あご出し・骨盤後傾」の姿勢不良群を認めたが、そのほとんどはその場ののびのび体操で改善した。
4.さらに「側弯症」に関する事前調査に関しても、特に小5の「ねこ背」、中2のHigh shoulderで保護者と検者との間の見立てにおいて大きな差を認めた。Rib Humpについては双方2名のチェックがあった。
5.運動器機能不全群への対応は、姿勢不良への「のびのび体操」を含め、「片脚立ち」「しゃがみ込み」「体前屈」動作の反復エクササイズ(運動プログラム)の介入が必要と考える。特に姿勢不良による機能性側弯には「のびのび体操」の継続が有効と言える。体操実施後、一時的ではあるが多くのProminent Scapulaが改善する印象を持っている。
更新日2019/03/26