1.ロコモについて(上級編)2.Healthy life Expectancy & Locomotive Syndrome  3.要介護者へのロコトレの効果 4.ロコモの解釈(介護予防の観点から) / 私見 5. JCOAコロナ自粛後の身体変化に関するアンケート調査結果  ーコロナロコモとコロナストレスー 2020年 6. JCOA / SLOC コロナ自粛後身体の変化に関するアンケート結果 2021年(第2報)

6. JCOA / SLOC コロナ自粛後身体の変化に関するアンケート結果2021年(第2報)

二階堂 元重

・2021.8.05

(目 的)第1回緊急自粛宣言後1年経過における各年代別の身体変化について昨年7月調査結果と比較検証、さらには都道府県別のロコモ / ストレス該当状況について調査した。

(対 象) JCOA会員医療機関などを訪れた患者ならびにその家族

(方 法)ウェブ選択肢回答形式または用紙記入形式

(期 間)令和3年3月8日~4月30日 (実日数42日間)

(内 容)調査結果は単純集計ならびにクロス集計により分析、今回は特に都道府県別のロコモ状況について比較検討を行った。

(調査項目)

1. 自粛後の体調について

1) 運動器機能の変化(コロナロコモ:ロコモ早期兆候3項目)

(1) つまづきやすくなった

(2) 速く歩くことがつらくなった

(3)  階段昇降がつらくなった

2) 体調の変化(コロナストレス:身体的ストレス3項目 )

(1) 体力がなくなった

(2) 疲れやすくなった

(3) 気力がなくなった

3)その他

(1)体重が増えた(コロナ肥満)

(2)姿勢が悪くなった

2. 自粛後身体のどこかが痛くなったか それはどこの部分か

3. 現在整形外科で治療中の病名・障がい名

4. 現在内科などで治療中の病名

5. 1日のスマホ、ゲームに費やす時間

6. 現在運動をしているか 運動の種類・頻度・時間

7. 自粛要請を守ることができたか

(結果)

1. 回答者の属性

総回答数、男女比ともに前回とほぼ同数同比率であった。高校生以上20歳未満該当者総数は60名であったため、「~20代」一括表記とした。児童生徒は634名(5.1%)、前回より少なかった。(820名 / 6.7%)

2.コロナロコモとコロナストレス

ロコモ早期3兆候は、いずれの項目も年齢が上がるにつれ増加。特に40代から急速に上昇し、80代でピークを示した。

「コロナロコモ」は全年齢層で前年(24.9%)に比し減少(16.3%)。その傾向は児童生徒、青壮年期に顕著で、80代のみ前年より増加していた。

コロナトレスについても3兆候の比率は前年とほぼ同様で、前年最多であった高校生の「体力がなくなった」が55.1%から42.5%に減少していた。

「コロナストレス」の割合はこの1年で児童生徒、特に小学生の精神ストレスが明らかに少なくなっていることがわかる。逆に20代、30代さらに80代〜で前年よりやや増加していた。

昨年4月第1回緊急事態宣言発令後1年4ヶ月。運動人口は昨年自粛前後を通じ、特に青壮年層において著しく減少していた。

前年とほぼ同様30%の人が身体の痛みを訴えていた。その割合は年齢とともに上昇したが、高校生では前年に比し、約15%減であった。

痛い部位は前年に比べ、「頚・腰」が減少し、「肩・肘・手」が増加していた。小学生では前年と同様「足・足関節」が40%以上で最多であった。

3. 児童生徒

ロコモ初期3兆候、ストレスともに前年に比し小学生で著しく減少していた。

「姿勢が悪くなった」「体重が増えた」ともに小学生で有意に減少していた。

前年に比し、全学年で運動時間が明確に増加していた。

1年経過、未就学児童でスマホに接しない子どもが増え、逆に高校生では3時間以上接している子どもが増えていた。

4. 青壮年層

運動人口は特に30代では昨年自粛後から17%減少、前年最も多かったウォーキング、散歩、ジョギング運動人口の割合が全年齢層で減少、特に青壮年期では半減していた。

運動量の減少とともに「姿勢が悪くなった」「体重が増えた」ともに30代で増加していた。

コロナロコモは全ての青壮年層で減少、コロナストレスでは20代、30代で前年を上回る結果であった。

 

 

5. 高齢者

60代、70代は前年に比べ、「ロコモ」「ストレス」ともに僅かに減少してたが、80代では双方増加、特に「ストレス」は7%増加していた。

高齢者においても、運動をしない人の割合は前年に比べ増加していた。とともにスマホに接する高齢者も増加、60代で16%、70代で13%、80代で6%前年から増加していた。

自粛後身体が痛くなった人は、年齢が上がるに従い増加、80代では前年に比し11%増加していた。

 

6. 現在治療中の病名・障がい名

回答者の70%が現在整形外科で治療を受けており、内訳は「肩こり・腰痛」が27.1%、「変形性膝関節症」が17.4%、以下「骨粗鬆症」「腰部脊柱管狭窄症」の順であった。

一方現在内科疾患で治療中の回答者はほぼ半数で、「高血圧症」が39.2%、「高脂血症」が19.0%、「糖尿病」が11.5%、以下表の通りであった。

7. 都道府県別コロナロコモ・ストレス該当割合

1)全国人口10万人あたりの感染者数(2021.5.28現在)

2)コロナロコモ(全年齢層)

3)コロナロコモ(60代以上)

4)コロナストレス(全年齢層)

全年齢層では「北海道」がロコモ・ストレスともにトップ。上位の8割は首都圏中心に感染割合最多地域が占めていた。

感染者が少ないにも関わらず「新潟県」はロコモ・ストレスともに、「富山」はストレスが多かった。

「山口県」「奈良県」は全年齢層でロコモ、ストレスともにに少なかった。

5)男女健康寿命とコロナロコモの相関

男女ともに健康寿命とコロナロコモとの間に明確な相関は認めなかった。

「東京都」「大阪府」「福岡県」など首都圏で健康寿命ランキングが低い地域は、感染割合ならびにロコモ 該当割合が高かった。

逆に健康寿命ランキングは男子1位、女子3位の「愛知県」は、感染割合全国8位、ロコモ該当割合が男子4位、女子1位という結果であった。

 

8. 今回の自粛要請を守ることかできたか

全回答者の半数以上は、今回の自粛要請をしっかり守ったと答えている。

 

(考 察)

 自粛解除後1年、7月12日には東京で4回目の緊急事態宣言が発令された。特に首都圏での感染拡大状況は「第5波の入り口」との報道もなされている。

 一方これまで国民全てに課せられた社会活動の制限は、広範囲の行動抑制を基本として各年齢層でそれぞれの新しい生活様式として定着している。

 前回調査時から8か月経過。今回二度目の調査では、コロナロコモ3項目は24.9%から16.3%、コロナストレス3項目は31.8%から29.0%という結果でこのことは運動器の変調は回復傾向であるが、精神ストレスについてはほぼ横ばいあったことを示していた。

 年代別割合では、コロナロコモは前回同様高齢者優位であったが、コロナストレスについては児童生徒で著減、20代と80代以上でやや増加していた以外ほぼ横ばいであった。

 1児童生徒

 全国一斉休校解除1年、全てのクラブ活動、スポーツ行事を含め、通常の学校生活が戻ったことで、すべての学年で運動時間は増加していた。

 コロナロコモ、ストレスともに減少、特に小学生では著しく減少、さらに姿勢不良、コロナ肥満の訴えもほぼ半減しており、体調変化はほぼ順調に回復傾向であることがわかった。

 また、スマホ・ゲームに接しない未就学児童が36%から47%に増えていたことも興味深い。

 2青壮年

 今回の調査ではこの年齢層における運動者の割合が著減、ウォーキング、ジョギングに関しては半減していたにもかかわらず、コロナロコモの割合は全ての青壮年層で減少していた。

 前回の調査では、自粛中特に20 代、30代で運動者割合が増えていたことで、青壮年層の健康への危機感が反映された結果と述べたが、この1年、長期に及ぶ禁欲生活は限界に達し、加えて自宅でのテレワーク業務など急激な環境変化に身体が馴れていったこともあり、個々の健康意識が徐々に薄れ、自粛前の生活スタイルに戻ることで、結果として運動量が減ったことが考えられる。

  今回30代では体重増加、姿勢が悪くなったという訴えは有意に増加している。おそらくつまづきやすい、階段昇降、速く歩くことがつらいなど運動器の変化も実際には起きてはいても、実感できていないだけではないだろうか。

特にこの年代では運動器機能の客観的評価として、高齢者同様「ロコモ度テスト」実施の必要を強く感じる。

 3高齢者

 運動人口の割合の減少とともにスマホ・ゲームに接する高齢者が増加、コロナロコモ、コロナストレスは80代で前年に比し増加していた。自粛後身体が痛くなった割合は高齢に従い増加、80代では前年に比し11%増加していた。

 この1年感染収束の出口が見えない状況下、高齢者にとってコロナへの警戒心はむしろ強くなっており、より外出自粛を遵守したことで、結果ウォーキング初め運動人口割合の減少とともに、家庭内でスマホ・ゲームに接する割合が増えたと推測される。

 コロナロコモ、コロナストレスの年代別推移からは、60代、70代については新しい生活様式に少しづつ順応しているようであるが、80代以上では運動器、精神ストレスともに増加、身体の痛い割合も有意に増加していた。

 今回の調査から、広範囲長期間の行動抑制は20代、30代の青年層および80代以上の高齢者の精神ストレスに影響を与えており、結果、前者では若年層の自粛意識の乱れによる感染率の増加、後者では今後さらに助長が予想される慢性の運動不足によるロコモ増加が懸念される。

7月10日時点で高齢者のワクチン2回接種率が46%、今後はSocial distanceを保ちながら、徐々に戸外での活動を再開していくべきと考える。

 4都道府県別ロコモ該当割合

コロナロコモ、ストレスともに上位の8割は、首都圏中心にコロナ感染割合最多地域が占めていた。一方、「奈良県」は感染者が多いにもかかわらず、感染者が少ない「山口県」と同様にロコモ、ストレスともに少なかった。「新潟県」「富山県」は、感染者が少ないにもかかわらず、前者はロコモ・ストレスともに、後者はストレスが多かった。

 また男女ともに健康寿命とコロナロコモとの間に明確な相関は認めなかった。

 「東京都」「大阪府」「福岡県」など首都圏で健康寿命ランキングが低い地域は、感染割合ならびにロコモ 該当割合が高く、逆に健康寿命ランキングは男子1位、女子3位の「愛知県」は、感染割合全国8位、ロコモ該当割合が男子4位、女子1位という結果であった。

 

 

5. JCOAコロナ自粛後の身体変化に関するアンケート調査結果    ーコロナロコモとコロナストレスー 2020年

                                     二階堂 元重

 

(目的)新型コロナウィルスの感染拡大は、国民にとって広範囲の行動抑制を余儀なくされ、自粛解除後もなお、新しい生活様式として一定の社会活動の制限を求められている。長期間自粛生活を強いられたことがいかに個々の運動機能に影響を与えたかを検証すべく、整形外科外来などを受診した全世代の患者並びにその家族を対象に、身体の変化に関するアンケート調査を行った。

(対象)JCOA会員医療機関などを訪れた患者並びにその家族

(方法)ウェブ選択肢回答形式又は用紙記入形式

(期間)令和2720日〜812日 (実日数16日間)

(内容)

緊急事態宣言解除後2ヶ月経過から調査を開始、単純集計ならびにクロス集計により分析を行なった。質問項目は以下の如くである。

. 運動について

 1) 自粛前・自粛中運動を行なっていたか

 2) 運動の種類

 3) 自粛前の運動頻度

 4) 自粛中の運動時間

. 自粛後の身体の痛みと部位

. 自粛後身体の変化の主観的評価

 1) 運動器機能の変化(コロナロコモ:ロコモ早期兆候3項目)

  ①つまづきやすくなった

  ②階段が昇りづらくなった

    ③速く歩けなくなった 

 2) 体調の変化(コロナストレス:精神身体ストレス4項目)

  ①体力がなくなった ②疲れやすくなった ③気力がなくなった ④体重が増えた(コロナ肥満)

 3) 子どもロコモ

休校前、休校中における小・中・高校生の運動頻度・時間ならびにスマホ・ゲームに費やす時間が身体に及ぼすストレスおよび身体の痛み、体重、姿勢について 

(結果)

. 回答者の属性

有効回答者数は12,254名、男性4,799(39.2%)、女性7,445(60.8%)であった。最も多かったのは70 2,62921.5%、以下60代、50代、40代、80代〜30代、20代〜の順で、60代以上が全体の半数超え51.4%を占めていた。一方学童生徒は全体の6.7%であった。(図 1)

. 運動について

1)運動を行なっていたか

自粛前運動をしていた人は6,634 54.2%、自粛中は6,72655.7%とやや増加していた。運動者の年代別割合は学童生徒で82.5%と著明に高く、20代から50代の青壮年期では平均44.3%、特に30代で39.3%と最も低かった。高齢者になるとむしろ平均58.7%、特に70代では62.9%と高い割合を示していた。自粛中の運動者は特に30代で11.0%自粛前より増加、逆に学童生徒で5.4%、70代、80代で2.2%減少していた。(図 2)

2)運動の種類

ジョギング、散歩を含めウォーキングが34.4%と最多で、次いでロコトレ・エアロビ・フィットネス13.5%、以下表の示す通りであった。最も多かったジョギング、散歩・ウォーキングの年代別割合は、20代以降では平均45.7%で、ほぼ年齢とともに増加し、70代では51.1%であった。(図 3)

3)自粛前の運動頻度

「週に2〜3回」が最多24.1%で、高校生の55.5%、中学生の40.4%かつ80代〜の24.5%が「毎日」運動を行なっており、両極で高い割合を示していた。(図 4)

4)自粛中の運動時間

「1時間以内」が45.1%最多で、高校生の12.7%、中学生の9.4%が「3時間以上」運動を行っていた。  (図 5)

. 自粛後身体の痛み

3,724 30.4%の人が身体のどこかが痛いと回答した。小学生と〜20代で20%以下と低かった以外、ほぼ年齢別割合は一定していた。内訳では「頚・腰」の痛みが55.2%最多で、〜20代をピークに子どもを除く全ての年代で半数以上を占めていた。一方小学生の40.5%、中学生の29.6%が「足・足関節の痛み」を訴えていた。(図 6)

. 自粛後身体の変化

「変化があった」と回答した人ではコロナロコモ24.9%、コロナストレス32.3%、子どもロコモ(学童生徒820名)29.5%であった。(図7)

) コロナロコモ

「階段が昇りづらくなった 28.9% 」「速く歩けなくなった27.7%」「つまづきやすくなった18.0%」、いずれの項目も年代とともに増加し全ての年齢層で動的バランス制御能の変化が静的変化を上回っていた。

(図8)

) コロナストレス

「体力がなくなった」で突出している高校生55.1%を除けば、全世代でその割合は「体力がなくなった38.5% 」「疲れやすくなった 32.9%」「気力がなくなった24.0%」の順でほぼ一定しており、年代とともに増加することはなく、高齢者では6029.2%、7031.2%、80代〜32.0%と全体の平均32.3%をやや下回っていた。多くの年代の35〜40%が体重増加を自覚し、70代以降その割合は減少していた。(図 9)

) 子どもロコモ

 全学年で「体力がなくなった」が最も多く、「疲れやすくなった」「気力がなくなった」の順にいずれの項目も学年が上がるとともに増加、高校生でピークを示していた。「身体のどこかが痛くなった」も同様の変化を示しており、「姿勢が悪くなった」は小学生に多く、「体重が増えた」は35%前後で一定していた。(図 10 

 

自粛中「全く運動しなかった群」は小学生の22.7%、「自粛中1日3時間以上運動をした群」は高校生の12.7%で一番多く、「自粛中スマホ・ゲームに1日3時間以上費やした群」では高校生の42.5%と際立った結果を示していた。それぞれについて体調の変化をみると、運動不足群では「体力がなくなった」が最多、運動過多群では「疲れやすくなった」ほかほとんどの項目で中学生が最多であった。(図 11

(考察)

自粛解除から調査開始まで2か月経過していたにもかかわらず約4割弱の体調が通常の状態まで回復していないことが示された。

山田6)は、コロナ禍緊急事態宣言発令前の2月、5,000人の身体の変化について緊急ウェブアンケート調査を実施し、60歳以上で前年に比べ48%の身体活動量が減少し、38%が家での座りがちな時間が増え、外出機会が減った60歳以上のうち52%が買い物、43%が公共交通機関の使用が減ったと回答したと報告している。

今回の調査では、「つまづきやすくなった」「階段が昇りづらくなった」「速く歩けない」などロコモ早期兆候の割合が年齢とともに増加、70代で30%に達し、80代〜では40%を超えていた(コロナロコモ)。

一方「体力がなくなった」ほか精神ストレスは、高校生39.0%を除き年齢とともに増加することはなく、30%台前半でほぼ一定であった。(コロナストレス)。(図 12 

グラフからは、子どもはコロナストレス、高齢者はコロナロコモ優位であることが明確である。その中間に位置する30代では、ロコモ3項目・ストレス4項目計7項目割合の平均が22.5%あった。

 吉村は大規模住民コホートROADスタディー第3回調査14)結果で、40歳以上ロコモ度1の臨床判断値15)16)17)である「ロコモ257点以上の割合5)7)11))22.6%であったと報告している。今回の自粛解除2か月調査では30代で運動機能低下に陥っており、現状では既にロコモ度1が始まっているという考え方もできそうである。

山田ら13)2020年ロコモ度テストの性・年代別基準値に関する横断研究の中で、ロコモ度1は立ち上がりテストでは30代、2ステップテストとロコモ25では40代から始まっていると述べている。

「運動の質と量」は各年代それぞれの運動機能異常ならびに身体ストレスの程度とも深く関わっている。

1)学童生徒

全国一斉休校により全てのクラブ活動、スポーツ行事は休止を余儀なくされ、自粛中の運動割合は5.4%減少していた。

学童生徒が感じているストレスは、自粛中長時間のスマホ・ゲーム生活がもたらす身体のかたさと姿勢不良、さらに運動不足と運動過多二極化による生活運動習慣の急激な変化を背景としている。

特に高校生は、自粛前の運動頻度、自粛中の運動時間が最多であると同時に自粛中1日に3時間以上スマホ・ゲームに接した割合も最多と、明確な運動過多・運動不足の二極化を示しており、結果55.1%が体力の低下を自覚していた。

また自粛中1日3時間以上運動した群では、中学生が有意に体調の変化を訴えていた。小学生では自粛後40.5%が足関節周辺の痛みを訴えている。休校中の関節のかたさは荷重関節の中でも足関節に特化して影響を及ぼしていることがわかった。さらに小学生の23.1%が姿勢が悪くなっていたことを意識していた。

近年子どもの体がかたい・バランスが悪い・姿勢不良などに起因する運動器の機能異常が指摘されており、長期自粛がさらに運動機能を低下させ、運動を再開した際に通常では考えられないようなけがをするような状況を作っていると考えられた。

今回休校明けの6月、さいたま市内の中1男子第5中足骨骨折、中2女子腓骨遠位端骨折、いずれも「なわとびによる骨折」が報告されている。

独立行政法人日本スポーツ振興センター統計2)によると、中学生の骨折発生率は40年間で1.0%から3.0%と3倍に増加している。

林ら4)は明確な基礎疾患のない子どもの運動器機能異常を「子どもロコモ」と呼び、埼玉県学校運動器検診を通じ、保護者・学校医・学級担任・養護教諭・栄養士など多職種連携のもと広く予防啓発活動を行っている。

2018年のスポーツ庁の調査12))でも児童生徒の体力・運動能力の経年的低下が指摘されており、子どもロコモは年々確実に増えている。

2)青壮年層

「社会の支え手」である青壮年層は、約7週に及ぶ外出自粛要請により、その多くが在宅での長期テレワーク業務など生活様式の転換を強いられたことで、様々な健康被害の危機に晒された。

今回の調査でも20代の76.0%、30代の72.7%は肩こり・腰痛を訴え、40代の39.9%、50代の40.3%は体重増加を自覚していた。長時間の座位によるエコノミークラス症候群発症のリスクも報告されている。

自粛前運動をしていた人の割合が低かったこの年代層において、自粛中特に20 代、30代で運動者割合が増えていたことは、青壮年世代の健康への危機感が反映された結果とも考えられ、大変興味深い。

3)高齢者

緊急事態宣言後、全ての運動施設は休館、団体スポーツ行事は中止され、さらには医療機関の診療抑制、通所リハ・介護施設の閉鎖などにより、高齢者もまた日常生活様式の急激な変化への対応を余儀なくされている。

こうした背景の中、今回の調査結果では、コロナロコモは年齢とともに増加しているにもかかわらず、コロナストレスは60代以降ではむしろ全体の平均をやや下回っていた。

ウォーキング人口については、20代以降は年齢とともに増加、70代では半数以上が行なっており、さらに自粛中多くのスポーツ活動が制限される中、その割合も2%程度の減少に留まっていた。80代では4人に1人は毎日運動をしているという結果からは、もはや日課と捉えてよい。

ウォーキングは代表的有酸素運動であり、対メタボ・認知症のみならず精神的ストレス予防効果をも有していると考えられ、健康意識の高い高齢者にとって適度の運動は、physicalというよりむしろmentalの衰えを抑止する効果があるように思われた。

そこで年齢とともに増加するコロナロコモ予防対策としては、有酸素運動だけでなく、低強度の筋力強化訓練でかつ静的バランス制御能改善を目的とした「ロコトレ」の介入が必要ということになる。

今回のアンケート結果では、ロコモ移動機能低下早期の兆候である静的バランス制御能変化の割合が、全ての年代で 動的バランス制御能の変化を下回っていた。

このことは、バランス力の発達が乳幼児期、動的制御能から静的制御能の順に確立し、老化では逆に静的制御能から動的制御能の順に劣化していくといFrankenbergの理論3)に反する結果を示していた。

Murray MP8)は正常歩行の80%は片脚支持「片脚立ち」であると述べている。

また代ら1)は静的バランス制御能は動的バランス制御能(歩行)を支持、安定させる補助的役割を果たしているとしている。

静的バランス制御能劣化>歩行が不安定>つまづきやすいとする主観的評価の判断は難しく、さらに加齢に伴い動的バランス制御能は著しく低下するという小野)の報告からも高齢とともにつまづくことへの認識が益々希薄になっていたのではないかと考える。

(結語)

コロナ禍により、国民全体の40%弱は精神的ストレスとりわけ体力不足を一致して感じている。その割合は高校生でピークに達し、高齢者ではむしろ平均以下に留まっていた。

運動過多と運動不足二極化は学童生徒の精神的ストレスを助長し、適度な有酸素運動は高齢者の精神的ストレスを軽減させていることがわかった。一方運動器の変調(コロナロコモ)に関しては、運動量とは無関係に年齢とともに増加し、かつコロナストレスとの相関も認められなかった。

コロナ禍収束への出口はいまだ見えず、国民には新しい生活様式への転換に向け、運動・生活習慣改善を目的とした行動変容が求められている。

今後長期化が予想されるウィズコロナ時代を見据え、学童生徒には規則正しい生活スタイルの構築と運動前後の適切なストレッチング、青壮年層には日常慢性の運動不足を解消するに見合う積極的なトレーニング、高齢者にはこれまでのウォーキングのみならず、ロコモフレイル予防として日々のロコトレ介入、それぞれの世代に見合ったオーダーメイドの運動生活習慣の改善が必要と考える。

加速度的に進行する少子高齢化社会の中、「健康な運動器」という一生の財産を得るためには、全ての年代それぞれに適したロコモ予防啓発活動の実践により、健康寿命延伸を図っていくことが必要であり、その中で我々整形外科医がキーパーソンとして果たすべき役割は大きい。

 稿を終えるにあたり、このたびの調査に際し終始ご協力いただいたJCOA会員ならびに事務局の皆様に厚く御礼申しあげます。

(参考文献)

1) 代 駿:高齢者における動的バランス機能向上のための運動プログラムの開発.コーチング学研究. 24-157-71, 2010.

2) 独立行政法人日本スポーツ振興センター「学校の管理下の災害基本統計各年度」データより

3) The DenverⅡ: a major revision and restandardization of the Denver Developmental Screening test. Pediatrics,89(1),91-97,1992

4) 林承弘ほか:子どもロコモと運動器検診について. 日整会誌 91 : 338-344, 2017.

5) 岩谷力ほか:ロコモティブシンドロームの操作的意義.日整会誌 88731-738, 2014.

6) Keiko Yamada et al : The COVID-19 outbreak limits physical activities and increases sedentary behavior : a possible secondary public health crisis for the elderly. J Orthop Sci. 25-61093-1094, Nov.2020.

7) 村本明生ほか:ロコモティブシンドロームにおける運動機能検査の閾値. J Orthop Sci; 18(4)618-626, 2013.

8) Murray MP : Gait as a total pattern of movement. Am J Phys Med. 46290-333, 1967

9) 小野 晃,琉子友男:静的・動的姿勢制御能の若年者と高齢者の比較 . 日本生理人類学会誌 4(4) : 7-12, 1999.

10) 佐久間真由美ほか:フレイルとロコモー概念の整理と展望ー. 日整会誌 93 :217-221, 201

11) Seichi A. et al Development of a screening tool for risk of locomotive syndrome in the elderlythe 25-question Geriatric Locomotive Function Scale. J Orthop Sci.17163-72, 2012.

12) スポーツ庁 平成30年度体力・運動能力調査結果の概要                     

13) Yamada. K et alReference values for the locomotive syndrome risk test quantifying mobility of 8681 adults aged 20–89 years: A cross-sectional nationwide study in Japan. J Orthop Sci. 25-61084-1092, Nov.2020.

14) Yoshimura N, Muraki S. et alEpidemiology of the locomotive syndromeThe Research on

Osteoarthritis/Osteoporosis Against Disability study 2005-2015. Mod Rheumatol. 27(1)1-7, 2017.

15) 吉村典子:ロコモティブシンドロームの臨床診断値と有病率. 日老医誌 52350-353, 2015.

16) ロコモチャレンジ!推進協議会:ロコモ度判定法. https://locomo-joa.jp/                                         

17) 吉村典子:ロコモの簡易測定法とその頻度. 理学療法学 45-5342-343,

                                            

 

4.  ロコモの解釈 (介護予防の観点から) / 私見  二階堂 元重

・2020.03.26

 

ロコモティブシンドローム 略して「ロコモ」。日本名では 「運動器症候群」と呼んでいる。

「運動器の障害により移動機能の低下をきたした状態」と定義され、進行すると「要支援」「要介護」さらには「寝たきり」になる可能性があるというものである。

運動器の障害ベースで移動機能が低下した状態は全てロコモとする学術上の定義であるが、後半の「進行すると要支援となるリスクが高くなる」からは、ロコモは要支援未満という行政上の解釈もできる。

すなわち「行政上のロコモ」とは「ロコモのはじまり・入り口」であり、介護を受けるきっかけとなる身体症状を意味している。

(左)全てが運動器のパーツである。各パーツのどれが壊れても身体はうまく動かない。整形外科は「あらゆる運動器障害の予防・診療」に携わっている。

(右)移動機能には、立ち上がりすなわち「垂直方向への移動」と、歩行すなわち「水平方向への移動」二種類の機能がある。双方が近未来の要介護移行予測にかかわる運動器関連の危険因子となっている。

「介護を受けるきっかけとなる身体症状」をご覧いただきたい。

まず破綻を生じるのは「片脚立ち」と「立ちあがり」、続いて「歩行」の順である。

これらの機能が段階的に障害されていくのである。

まさにこの「片脚立ち」「立ち上がり」の破綻こそロコモのはじまり・入り口といえる。

 

乳幼児のバランス力の目安を示す図をみるとおわかりのように、幼児の「動的バランス力」は2歳までには確立する。

しかしながら、片脚立ち(静的バランス力)できるようになるのはその後3歳を過ぎてからで、6歳でようやく5秒の片脚立ちが可能となる。

このように発達は「動的バランス力」から「静的バランス力」に順に確立していく。

一方老化はこれと逆で、「静的バランス力」から「動的バランス力」の順に衰えていくのである。

(左)筋量の減少は50才頃から始まり、60才から急激に低下するが、体幹、上肢に比し下肢の筋肉量の落ち幅が男女ともに大きいことがわかる。

(右)老化に伴って速筋線維が優位に減少するため、大きな力を必要とする立ち座りや速く歩くなどの動作が不自由になる。

ロコモでは、まず立位静的バランス力が崩れ、さらに体幹・下肢の筋力低下を生じる。順番として片脚立ち、立ち上がりが困難となり、早く歩けなくなる。「空間認識能力」の衰えも関与し、つまづきやすくなる。

*空間認知機能:位置形状など物体がおかれている状況をすばやく正確に把握認識する能力       ・狙った場所にボールを当てる・飛んでくるボールを掴む・2次元地図の構造を把握する。

 

 

どれか一つでも当てはまればロコモである。

片脚立ち平均時間は60歳から急速に低下する。「開眼片脚起立時間 15秒」は「運動器不安定症」のカットオフ値である。

我々は「片脚起立時間 20秒」を「ロコモ」と判定するカットオフ値(病態識別値 / ロコモ最初のスクリーニングツール)として最適であると考えている。

ロコモ度テストは二つの「身体的機能評価」と一つの「主観的評価」から成る、

(左)行政上のロコモの定義を「要支援未満」とすれば、「健康寿命」の定義も「自立した生活ができる生存期間」ということで、「要支援未満」と捉えることができる。

(右)平均寿命との差、男子で9年間、女子で13年間が「不健康寿命」であり、要支援・要介護さらには寝たきり状態の期間といえる。

健康寿命に影響を与える要因は何だろうか。

要介護の場合は、1位が認知症、そして脳卒中、老衰と続いて、関節疾患、骨折・転倒、関節疾患と運動器に起因するものが要因の3位を占める。

一方要支援の場合では、運動器に起因するものが32%、すなわち第1位を占めることになる。

つまり、健康寿命という観点からは、運動器疾患対策が重要になってくると言える。

ロコモは図のように2群に分けて考えるとわかりやすい。

①運動器関連疾患由来ではない群、すなわちサルコペニア、フレイル、さらにはMCI、口腔内疾患などをベースとした「運動器機能不全群」。この群は立位静的バランス力の低下、下肢筋力低下ならびに空間認知機能の劣化をベースとし「移動機能の低下が始まっている段階」として多くは「ロコモ度1」であり、要支援予備群である。(行政上のロコモ)

②要支援要因の30%超を占める転倒骨折を含む運動器関連疾患をベースとした「運動器不安定症群」。生活習慣病由来の骨質劣化型骨粗鬆症も含む。この群は「移動機能低下が進行している段階」としてその多くはロコモ度2に向かう要介護予備群となる。

全国市町村は、地域包括ケアシステムの一環として進める介護予防事業の仕組みの中で、要支援予備群を「二次予防事業対象者」として全高齢者の10%枠で認定し、積極的に介入を展開している。

この枠は、移動機能の低下が始まった状態として、その多くは日整会ロコモ臨床判断値上の「ロコモ度1」の範疇であり、ロコモの定義からもまさにこのグループこそが「行政上のロコモ」①と考えてよい。

一方、運動器の障害は、転倒骨折を含む運動器関連として要支援要因の30%超で第1位を占めている。

このグループは移動機能の低下が進行した状態として、その多くが「ロコモ度2」と思われる。

そこで、この両群すなわち介護予防事業における二次予防事業対象者群さらに運動器疾患ベースの要支援対象者群をあわせて「学術上のロコモ」①+②と考えれば理解しやすい。

さらに「健康寿命」の定義が「自立した生活ができる生存期間」ということで、これもまた要支援未満と解釈すれば、健康寿命延伸のために整形外科医は、両群への対策を分けて考えなければならない。

すなわち前者へはロコトレの積極的介入により要支援への移行阻止に努め、後者へは運動器疾患の早期診断早期治療により要支援対象者の縮減を図ることが必要となる。

この両群への対応により、介護予防すなわち「ストップ・ザ・ロコモ」に寄与することが、健康寿命延伸のため我々整形外科医に課せられた使命と考えている。

1. ロコモについて(上級編)

・2015/05/19

● 佐藤敏信日医総研主席研究員(前厚労省健康局長)監修の講演用スライド原稿です。スライドは以下のサイトよりご自由にダウンロードの上ご使用ください。
ロコモスライド(医師会ヴァージョン)30枚ダウンロードはこちら

*スライド#19「ロコトレ動画」について
Quick TimeがインストールされていないWindowsマシンで、動作しない場合は、HPメインサイト「ロコトレ動画」https://sloc.or.jp/?page_id=163よりお入りいただき、用途にあったヴァージョンをダウンロードの上ご使用ください。

● ダイジェスト版PPTは19枚、 5分の講演内容に凝縮しています。ご自由にダウンロードの上ご使用ください。

ロコモスライド(医師会ヴァージョン / ダイジェスト版)19枚 ダウンロードはこちら

ダイジェスト版PPTは19枚、 5分の講演内容に凝縮しています。
ご自由にダウンロードの上ご使用ください。

超高齢社会における健康寿命の延伸は国民全ての願いです。
そうした中で、「ロコモ」とその対策がどういう意義を持つのかを説明します。

 

まず、我が国の死因別死亡数とその割合の図です。これまではこの図をもとに、がん、心臓病、脳血管疾患などの生活習慣病を中心的な課題と位置づけ、対策を進めてきました。しかし、これからは、平行して「ロコモ対策」を進める必要があります。その背景や意義について述べます。

 

我が国の高齢化率は2013年25%と、2005年以後、世界一の超高齢社会となっています。
ここから,健康寿命に影響を与える要因をみていきます。

健康寿命は、男性70.42歳、女性73.62歳です。

 

その定義は「自立して健康に生活できる年齢」。これは介護度では、要支援者に至る前の状態を意味しています。 これは我々が提唱した「ロコモ」の定義である「自立した歩行能力を有する状態」ともほぼ整合しています。

それでは健康寿命に影響を与える要因、つまりこれを短くする要因は何でしょうか。

要介護の場合は、1位が脳卒中、そして認知症、老衰と続いて、関節疾患、骨折・転倒です。

 

しかし、この骨折・転倒と関節疾患を合わせると17%、すなわち運動器に起因するものが要因の3位となります。
同様に考えると、要支援の場合は、運動器に起因するものが33%、つまり第1位を占めることになります。つまり、健康寿命という観点からは、運動器疾患対策が重要であるということが言えます。

 

ここまで、健康寿命に影響を与える要因としての運動器疾患の意義、重要性を見てきましたが、医療や医療提供体制への影響も見てみましょう。

 

「患者調査」による年齢階級別傷病分類別外来患者数の「グラフ」を示します。死因別死亡でも述べましたように引き続き生活習慣病対策が重要ですが、60歳以上の年齢階級を注意深くみますと、明らかに運動器疾患が中心になり、生活習慣病全体をも凌駕していることがわかります。

では、今後運動器疾患にどう対応していくか。我々は今、「ロコモティブシンドローム」という概念を提唱し、その対策を行うことが健康寿命延伸の鍵と捉えています。

 

高齢化による運動器の変化について簡単に説明します。
筋力低下は、50才頃から始まり、60才から急激に低下すると言われています。

 

年齢とともに、特に体幹と下肢の筋肉が衰えます。また、「つまづき易くなる」のは筋力の低下ではなく「バランス能力」の低下によるものです。
すなわち「足が上がらない」のではなく、体の不安定感により無意識に足を上げない「すり足」になっているのです。

高齢化により、筋力の衰えとともに平衡機能が低下し、とりわけ起立や歩行が困難になります。それらの状態は、既存の疾患として診断できる場合もありますが、通常は、高齢化に伴って各種の運動の機能の一部または全部が低下した状態と考えるのが適当です。

 

これらを総称して我々は「運動器の障害により歩行・立ち座りなどの移動機能の低下をきたした状態」とし、「ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)」という概念で捉え、その対応を考えるべきとしました。

今後、健康寿命の延伸のためには、「要支援」の4割を占める運動器疾患、ならびに「要支援未満」の「ロコモ予備軍」、これら両群への対策が必要になります。
そのためには、骨粗鬆症への対応を含め、
1.「転ばない」
2.「転んでも折れない」
3.「折れてもまた歩ける」
体をつくることが重要です。

そのためのロコモーション・トレーニング(ロコトレ)の実際について説明します。

ロコトレ動画はこちら

 

膝や腰への負担が軽く、安定性も高く、家庭でも簡単にできて、先ほどの3つの目的を達成するトレーニング法として、我々は、「開眼片脚起立」と「スクワット」、この2種類の運動を推奨しており、総称して「ロコトレ」と呼んでいます。

「スクワット」は、洋式便座に腰を下ろすイメージで、ゆっくり・じっくり行います。

おもに「大殿筋」「大腿四頭筋」「ハムストリング」「前脛骨筋」など移動能力に必要な下肢の筋力の訓練に有効で、使っている筋肉を意識しながらおこなうと、より効果的です。

 

支えが必要な場合は、充分注意して、机に手をついて、腰を浮かせるようなつもりの動作をゆっくり繰り返すだけでも効果は得られます。
これらを毎日続ければ、筋力の維持向上とともに、折れにくい骨にする効果も期待できます。

個々の高齢者に「ロコモ」の考え方を理解していただくためには専門家の助けが必要です。
SLOCが養成する「ロコモコーディネーター」をご紹介します。

 

2017年度末までに、要支援対象者に対する介護サービスが市町村事業に完全移行することが決定しました。各自治体では「ロコモ」予防体操の住民への普及啓発を目的に、ボランティアを対象に、現場で直接予防体操等を指導する「指導員・普及員」の養成を独自に進めていこうとする動きが始まっています。

われわれは、現場での「ロコモ」予防活動に携わるボランティアなどの養成、「ロコトレ」指導ならびに自治体との間に立って派遣などの調整役(コーディネート)を担うロコモコーディネーターの養成に取り組んでいます。受講資格は医療系・介護系の有資格者などとしました。2014年は6月浜松市、12月宮崎で開催され、計269名の「ロコモコーディ ネーター」が誕生しています。

ここで「ロコトレ」の効果を具体的なデータで示します。

 

 

そもそも、高齢者に「ロコトレ」などのアプローチを全くしなければどういう経過をたどるでしょうか?
平成21年 東京都「運動器の機能向上マニュアル分担研究班」の報告によると、「要支援1」相当のロコトレ未実施1,000人を1年後に再評価したところ、61%が改善もしくは維持で、39%が悪化という結果でした。

 

平成19年から23年、藤野整形外科医院外来で運動器不安定症と診断された患者さんのうち、要支援1から要介護1に認定され、かつ通院あるいは通所リハで「ロコトレ」を1年以上実施している患者さんを対象に、追跡調査を行いました。

 

*対象は129名(男25・女104)
*年齢男女とも78歳
*開始時介護度 要支援1 66%・要支援2 28%
・要介護1 6%
*運動器不安定症の原因疾患
腰椎疾患 43%・変形性膝関節症 36%
*運動器不安定症プログラム
1.開眼片脚起立訓練 2.スクワット 3.セラバンド体操

「要支援1」85人は、「ロコトレ」を開始して1年目で64人75%が維持、21人25%が悪化していました。

「要支援2」36人中、「ロコトレ」を開始して1年目で33人92%が改善または維持、3人8%が悪化していました。

 

同様に「介護1」8人では、「ロコトレ」開始1年後、悪化例は1例もありませんでした。

 

以上より、介護度に比例して「ロコトレ」が有用であるという結果が得られました。

 

最後に、そうした効果が最終的に医療や介護の費用へどれだけの影響を与えるのか、極めて粗い試算ですが、検討しました。

 

これまでに述べたように「ロコモティブシンドローム」の原因となる病態や疾患は様々であり、それらを個々に積み上げて計算することもできますが、それでは複雑になり、しかも誤差も生じるので、ここでは簡単に大腿骨頚部骨折に絞って費用を計算することにしました。

 

骨粗鬆症財団の調査によれば、年間の大腿骨頚部骨折患者数は現在では約20万人と推計されています。大腿骨頚部骨折の手術・入院費用は約200万円, 介護保険制度の単位から算出した最も介護度の低い要介護1の年間介護福祉施設サービス費用は約240万円と推定されます。
一方大腿骨頚部骨折の予後については, 骨折により自立すなわち歩行可能な者から寝たきりあるいは要介護となる者は約40%と推測されます。40%8万人の自立者の骨折患者さんのうち、さらに40%の方の「要支援」もしくは要介護への移行を阻止できれたとすれば、その医療・介護経済効果は年間3,600億円×0.4=1,500億円と推計されます。

「ロコモ」はすでに行政施策に組み込まれていますが、いまだ充分とは言えません。
今後は「健康日本21」や市町村介護予防事業の中でその充実を図るべきであり、我々は「ロコモコーディネーター」の養成を通じ、今後煩雑を極めると推測される事業の流れを円滑に進める手段の一助になればと願っています。

 

2. Healthy life Expectancy & Locomotive Syndrome

Motoshige NIKAIDO
presented at the 5th.Korea-Japan clinical orthopedics joint meeting
MAY.06,2017 Busan,Korea

Reference : Locomotive Syndrome Pamphlet 2015 / The Locomotive Challenge !

Japan is one of the countries in the world that is rapidly speeding towards a super-aged society.The declining birth rate coupled with an aging population and decrease in the productive-age population have brought forward issues associated with securing financial resources, accompanied by increases in medical care expenses over time. The social security system in Japan is currently in a critical situation.

Healthy life expectancy means the number of years people can expect to live in good health without assistance.The gap between the average life expectancy and healthy life expectancy,currently 9 years for men and 13 years for women, represents the period during which people require support/care or are bedridden.

Among all the reasons for “Requiring Assistance”, Locomotor diseases that we treat in daily practice account for 34%,representing the most frequent reason in 2013.

*Locomotor diseases : Musculoskeletal disorders ( LSCS. Osteoporosis. Knee OA etc.)

*Locomotive Dysfunction : Diminish one’s body’s ability to move.

To achieve our goal in the future, measures for patients with Locomotor Diseases, as well as for the “not-yet-Requiring-Assistance group”, in other words, the Locomotive syndrome group,are critical.

In order to extend healthy life expectancy and reduce the increase in the social cost of medical care,the onus is on orthopedists, as leaders among health care professionals in this field,to extend their cooperation.

Locomotor Organs are like the engines or wheels of a “Locomotive”. It means “ the Musculoskeletal system” , consisting of the bones , joints , muscles , and nerves .The body cannot move properly if any part of the system is broken.

“Locomotive syndrome” means neither a Disease nor Diagnosis.  Far from that it is more like Health Condition or Abnormality of Locomotor Organs. Locomotive function means one’s body’s ability to move .

In Infant , the balance grows starting from “Dynamic Balance” to “Static Balance”.
On the other hand , declines from “Static” to “Dynamic” with advancing age.

Dr.Frankenburg ; Connecticut. USA 1960

Average time of “Standing on One Leg” starts declining from around people’s 60’s.

Muscular strength starts declining from around people’s 50’s and it suddenly falls around their 60’s.In particular , decrease in lower extremities significantly with age , as compared to upper extremities.

Muscle fibers may be broadly categorized as type 1/ slow, red muscle and type 2 / fast, white muscle.The former is affected to “ Endurance capacity”, and latter is prominent to “Instantaneous force”.

With advancing age , White muscle decreases significantly .So it becomes more difficult to do motion with big power such asstanding up , sitting down and walking fast .

Even just one sign applies to you , out of seven warning signs, you are potentially Locomotive Syndrome .

The Locomotive Challenge! / Locomotive Syndrome Pamphlet 2015

 

As training methods to prevent Locomotive Syndrome, we recommend two exercises “Standing on One Leg,” and “Squatting,” because they are associated with less stress on the knees and the back, and can be performed safely and easily at home. In addition, these exercises are based on evidence, and we collectively call them “Loco-Training”.

The One-Leg Standing is based on the idea of “Dynamic Flamingo (DF) Therapy”.

Only one minute of standing on one foot is said to be equivalent to walking for approximately 53 minutes.The DF Therapy improves not only the ability to balance, but also the bone density in the proximal Femur.

On the other hand, Squatting is a safe and effective training exercise for overall maintaining and strengthening of the muscles of the lower extremities, including the Gluteus maximus muscle,Quadriceps femoris muscle, Hamstrings, and Anterior tibial muscle, which are required for Locomotive Function.

Standing on One Leg / Squat (LIVE)

 

3. 要介護者へのロコトレの効果

2016.10.28

1.高齢者の運動機能トレーニング
要介護者へのロコモーショントレーニング 藤野圭司

特集 ロコモティブシンドロームー予防・治療のための運動支援ー

臨床スポーツ医学 vol.27,No.1 2010-1 49-54

2.要介護者に対するロコモーショントレーニング(ロコトレ)の効果 藤野圭司

治療学 vol.44,No.7 2010 97-99

3.ロコモ予防による効果について ーNPO法人全国ストップ・ザ・ロコモ協議会からの一考察ー

久保谷 康夫

https://sloc.or.jp/wp01/wp-content/uploads/2018/12/7b76514bfce61da8b81529b4760b121e.pdf

更新日2021/08/05