1.ロコモについて(上級編)2.Healthy life Expectancy & Locomotive Syndrome  3.要介護者へのロコトレの効果 4.ロコモの解釈(介護予防の観点から) / 私見 5. JCOAコロナ自粛後の身体変化に関するアンケート調査結果  ーコロナロコモとコロナストレスー 2020年 6. JCOA / SLOC コロナ自粛後身体の変化に関するアンケート結果 2021年(第2報)

6. JCOA / SLOC コロナ自粛後身体の変化に関するアンケート結果2021年(第2報)

二階堂 元重

・2021.8.05

(目 的)第1回緊急自粛宣言後1年経過における各年代別の身体変化について昨年7月調査結果と比較検証、さらには都道府県別のロコモ / ストレス該当状況について調査した。

(対 象) JCOA会員医療機関などを訪れた患者ならびにその家族

(方 法)ウェブ選択肢回答形式または用紙記入形式

(期 間)令和3年3月8日~4月30日 (実日数42日間)

(内 容)調査結果は単純集計ならびにクロス集計により分析、今回は特に都道府県別のロコモ状況について比較検討を行った。

(調査項目)

1. 自粛後の体調について

1) 運動器機能の変化(コロナロコモ:ロコモ早期兆候3項目)

(1) つまづきやすくなった

(2) 速く歩くことがつらくなった

(3)  階段昇降がつらくなった

2) 体調の変化(コロナストレス:身体的ストレス3項目 )

(1) 体力がなくなった

(2) 疲れやすくなった

(3) 気力がなくなった

3)その他

(1)体重が増えた(コロナ肥満)

(2)姿勢が悪くなった

2. 自粛後身体のどこかが痛くなったか それはどこの部分か

3. 現在整形外科で治療中の病名・障がい名

4. 現在内科などで治療中の病名

5. 1日のスマホ、ゲームに費やす時間

6. 現在運動をしているか 運動の種類・頻度・時間

7. 自粛要請を守ることができたか

(結果)

1. 回答者の属性

総回答数、男女比ともに前回とほぼ同数同比率であった。高校生以上20歳未満該当者総数は60名であったため、「~20代」一括表記とした。児童生徒は634名(5.1%)、前回より少なかった。(820名 / 6.7%)

2.コロナロコモとコロナストレス

ロコモ早期3兆候は、いずれの項目も年齢が上がるにつれ増加。特に40代から急速に上昇し、80代でピークを示した。

「コロナロコモ」は全年齢層で前年(24.9%)に比し減少(16.3%)。その傾向は児童生徒、青壮年期に顕著で、80代のみ前年より増加していた。

コロナトレスについても3兆候の比率は前年とほぼ同様で、前年最多であった高校生の「体力がなくなった」が55.1%から42.5%に減少していた。

「コロナストレス」の割合はこの1年で児童生徒、特に小学生の精神ストレスが明らかに少なくなっていることがわかる。逆に20代、30代さらに80代〜で前年よりやや増加していた。

昨年4月第1回緊急事態宣言発令後1年4ヶ月。運動人口は昨年自粛前後を通じ、特に青壮年層において著しく減少していた。

前年とほぼ同様30%の人が身体の痛みを訴えていた。その割合は年齢とともに上昇したが、高校生では前年に比し、約15%減であった。

痛い部位は前年に比べ、「頚・腰」が減少し、「肩・肘・手」が増加していた。小学生では前年と同様「足・足関節」が40%以上で最多であった。

3. 児童生徒

ロコモ初期3兆候、ストレスともに前年に比し小学生で著しく減少していた。

「姿勢が悪くなった」「体重が増えた」ともに小学生で有意に減少していた。

前年に比し、全学年で運動時間が明確に増加していた。

1年経過、未就学児童でスマホに接しない子どもが増え、逆に高校生では3時間以上接している子どもが増えていた。

4. 青壮年層

運動人口は特に30代では昨年自粛後から17%減少、前年最も多かったウォーキング、散歩、ジョギング運動人口の割合が全年齢層で減少、特に青壮年期では半減していた。

運動量の減少とともに「姿勢が悪くなった」「体重が増えた」ともに30代で増加していた。

コロナロコモは全ての青壮年層で減少、コロナストレスでは20代、30代で前年を上回る結果であった。

 

 

5. 高齢者

60代、70代は前年に比べ、「ロコモ」「ストレス」ともに僅かに減少してたが、80代では双方増加、特に「ストレス」は7%増加していた。

高齢者においても、運動をしない人の割合は前年に比べ増加していた。とともにスマホに接する高齢者も増加、60代で16%、70代で13%、80代で6%前年から増加していた。

自粛後身体が痛くなった人は、年齢が上がるに従い増加、80代では前年に比し11%増加していた。

 

6. 現在治療中の病名・障がい名

回答者の70%が現在整形外科で治療を受けており、内訳は「肩こり・腰痛」が27.1%、「変形性膝関節症」が17.4%、以下「骨粗鬆症」「腰部脊柱管狭窄症」の順であった。

一方現在内科疾患で治療中の回答者はほぼ半数で、「高血圧症」が39.2%、「高脂血症」が19.0%、「糖尿病」が11.5%、以下表の通りであった。

7. 都道府県別コロナロコモ・ストレス該当割合

1)全国人口10万人あたりの感染者数(2021.5.28現在)

2)コロナロコモ(全年齢層)

3)コロナロコモ(60代以上)

4)コロナストレス(全年齢層)

全年齢層では「北海道」がロコモ・ストレスともにトップ。上位の8割は首都圏中心に感染割合最多地域が占めていた。

感染者が少ないにも関わらず「新潟県」はロコモ・ストレスともに、「富山」はストレスが多かった。

「山口県」「奈良県」は全年齢層でロコモ、ストレスともにに少なかった。

5)男女健康寿命とコロナロコモの相関

男女ともに健康寿命とコロナロコモとの間に明確な相関は認めなかった。

「東京都」「大阪府」「福岡県」など首都圏で健康寿命ランキングが低い地域は、感染割合ならびにロコモ 該当割合が高かった。

逆に健康寿命ランキングは男子1位、女子3位の「愛知県」は、感染割合全国8位、ロコモ該当割合が男子4位、女子1位という結果であった。

 

8. 今回の自粛要請を守ることかできたか

全回答者の半数以上は、今回の自粛要請をしっかり守ったと答えている。

 

(考 察)

 自粛解除後1年、7月12日には東京で4回目の緊急事態宣言が発令された。特に首都圏での感染拡大状況は「第5波の入り口」との報道もなされている。

 一方これまで国民全てに課せられた社会活動の制限は、広範囲の行動抑制を基本として各年齢層でそれぞれの新しい生活様式として定着している。

 前回調査時から8か月経過。今回二度目の調査では、コロナロコモ3項目は24.9%から16.3%、コロナストレス3項目は31.8%から29.0%という結果でこのことは運動器の変調は回復傾向であるが、精神ストレスについてはほぼ横ばいあったことを示していた。

 年代別割合では、コロナロコモは前回同様高齢者優位であったが、コロナストレスについては児童生徒で著減、20代と80代以上でやや増加していた以外ほぼ横ばいであった。

 1児童生徒

 全国一斉休校解除1年、全てのクラブ活動、スポーツ行事を含め、通常の学校生活が戻ったことで、すべての学年で運動時間は増加していた。

 コロナロコモ、ストレスともに減少、特に小学生では著しく減少、さらに姿勢不良、コロナ肥満の訴えもほぼ半減しており、体調変化はほぼ順調に回復傾向であることがわかった。

 また、スマホ・ゲームに接しない未就学児童が36%から47%に増えていたことも興味深い。

 2青壮年

 今回の調査ではこの年齢層における運動者の割合が著減、ウォーキング、ジョギングに関しては半減していたにもかかわらず、コロナロコモの割合は全ての青壮年層で減少していた。

 前回の調査では、自粛中特に20 代、30代で運動者割合が増えていたことで、青壮年層の健康への危機感が反映された結果と述べたが、この1年、長期に及ぶ禁欲生活は限界に達し、加えて自宅でのテレワーク業務など急激な環境変化に身体が馴れていったこともあり、個々の健康意識が徐々に薄れ、自粛前の生活スタイルに戻ることで、結果として運動量が減ったことが考えられる。

  今回30代では体重増加、姿勢が悪くなったという訴えは有意に増加している。おそらくつまづきやすい、階段昇降、速く歩くことがつらいなど運動器の変化も実際には起きてはいても、実感できていないだけではないだろうか。

特にこの年代では運動器機能の客観的評価として、高齢者同様「ロコモ度テスト」実施の必要を強く感じる。

 3高齢者

 運動人口の割合の減少とともにスマホ・ゲームに接する高齢者が増加、コロナロコモ、コロナストレスは80代で前年に比し増加していた。自粛後身体が痛くなった割合は高齢に従い増加、80代では前年に比し11%増加していた。

 この1年感染収束の出口が見えない状況下、高齢者にとってコロナへの警戒心はむしろ強くなっており、より外出自粛を遵守したことで、結果ウォーキング初め運動人口割合の減少とともに、家庭内でスマホ・ゲームに接する割合が増えたと推測される。

 コロナロコモ、コロナストレスの年代別推移からは、60代、70代については新しい生活様式に少しづつ順応しているようであるが、80代以上では運動器、精神ストレスともに増加、身体の痛い割合も有意に増加していた。

 今回の調査から、広範囲長期間の行動抑制は20代、30代の青年層および80代以上の高齢者の精神ストレスに影響を与えており、結果、前者では若年層の自粛意識の乱れによる感染率の増加、後者では今後さらに助長が予想される慢性の運動不足によるロコモ増加が懸念される。

7月10日時点で高齢者のワクチン2回接種率が46%、今後はSocial distanceを保ちながら、徐々に戸外での活動を再開していくべきと考える。

 4都道府県別ロコモ該当割合

コロナロコモ、ストレスともに上位の8割は、首都圏中心にコロナ感染割合最多地域が占めていた。一方、「奈良県」は感染者が多いにもかかわらず、感染者が少ない「山口県」と同様にロコモ、ストレスともに少なかった。「新潟県」「富山県」は、感染者が少ないにもかかわらず、前者はロコモ・ストレスともに、後者はストレスが多かった。

 また男女ともに健康寿命とコロナロコモとの間に明確な相関は認めなかった。

 「東京都」「大阪府」「福岡県」など首都圏で健康寿命ランキングが低い地域は、感染割合ならびにロコモ 該当割合が高く、逆に健康寿命ランキングは男子1位、女子3位の「愛知県」は、感染割合全国8位、ロコモ該当割合が男子4位、女子1位という結果であった。

 

 

5. JCOAコロナ自粛後の身体変化に関するアンケート調査結果    ーコロナロコモとコロナストレスー 2020年

                                     二階堂 元重

 

(目的)新型コロナウィルスの感染拡大は、国民にとって広範囲の行動抑制を余儀なくされ、自粛解除後もなお、新しい生活様式として一定の社会活動の制限を求められている。長期間自粛生活を強いられたことがいかに個々の運動機能に影響を与えたかを検証すべく、整形外科外来などを受診した全世代の患者並びにその家族を対象に、身体の変化に関するアンケート調査を行った。

(対象)JCOA会員医療機関などを訪れた患者並びにその家族

(方法)ウェブ選択肢回答形式又は用紙記入形式

(期間)令和2720日〜812日 (実日数16日間)

(内容)

緊急事態宣言解除後2ヶ月経過から調査を開始、単純集計ならびにクロス集計により分析を行なった。質問項目は以下の如くである。

. 運動について

 1) 自粛前・自粛中運動を行なっていたか

 2) 運動の種類

 3) 自粛前の運動頻度

 4) 自粛中の運動時間

. 自粛後の身体の痛みと部位

. 自粛後身体の変化の主観的評価

 1) 運動器機能の変化(コロナロコモ:ロコモ早期兆候3項目)

  ①つまづきやすくなった

  ②階段が昇りづらくなった

    ③速く歩けなくなった 

 2) 体調の変化(コロナストレス:精神身体ストレス4項目)

  ①体力がなくなった ②疲れやすくなった ③気力がなくなった ④体重が増えた(コロナ肥満)

 3) 子どもロコモ

休校前、休校中における小・中・高校生の運動頻度・時間ならびにスマホ・ゲームに費やす時間が身体に及ぼすストレスおよび身体の痛み、体重、姿勢について 

(結果)

. 回答者の属性

有効回答者数は12,254名、男性4,799(39.2%)、女性7,445(60.8%)であった。最も多かったのは70 2,62921.5%、以下60代、50代、40代、80代〜30代、20代〜の順で、60代以上が全体の半数超え51.4%を占めていた。一方学童生徒は全体の6.7%であった。(図 1)

. 運動について

1)運動を行なっていたか

自粛前運動をしていた人は6,634 54.2%、自粛中は6,72655.7%とやや増加していた。運動者の年代別割合は学童生徒で82.5%と著明に高く、20代から50代の青壮年期では平均44.3%、特に30代で39.3%と最も低かった。高齢者になるとむしろ平均58.7%、特に70代では62.9%と高い割合を示していた。自粛中の運動者は特に30代で11.0%自粛前より増加、逆に学童生徒で5.4%、70代、80代で2.2%減少していた。(図 2)

2)運動の種類

ジョギング、散歩を含めウォーキングが34.4%と最多で、次いでロコトレ・エアロビ・フィットネス13.5%、以下表の示す通りであった。最も多かったジョギング、散歩・ウォーキングの年代別割合は、20代以降では平均45.7%で、ほぼ年齢とともに増加し、70代では51.1%であった。(図 3)

3)自粛前の運動頻度

「週に2〜3回」が最多24.1%で、高校生の55.5%、中学生の40.4%かつ80代〜の24.5%が「毎日」運動を行なっており、両極で高い割合を示していた。(図 4)

4)自粛中の運動時間

「1時間以内」が45.1%最多で、高校生の12.7%、中学生の9.4%が「3時間以上」運動を行っていた。  (図 5)

. 自粛後身体の痛み

3,724 30.4%の人が身体のどこかが痛いと回答した。小学生と〜20代で20%以下と低かった以外、ほぼ年齢別割合は一定していた。内訳では「頚・腰」の痛みが55.2%最多で、〜20代をピークに子どもを除く全ての年代で半数以上を占めていた。一方小学生の40.5%、中学生の29.6%が「足・足関節の痛み」を訴えていた。(図 6)