「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」をストップ NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 SLOC(エスロック)

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2.ロコモについて(上級編)

要介護者へのロコトレの効果

2016.10.28

1.高齢者の運動機能トレーニング
要介護者へのロコモーショントレーニング 藤野圭司

特集 ロコモティブシンドロームー予防・治療のための運動支援ー

臨床スポーツ医学 vol.27,No.1 2010-1 49-54
https://www.data-box.jp/pdir/ac31fbe134194b6494df00ce0a615910

2.要介護者に対するロコモーショントレーニング(ロコトレ)の効果 藤野圭司

治療学 vol.44,No.7 2010 97-99
https://www.data-box.jp/pdir/e02bb3424c1c4954ad1dd20460186d85

3.ロコモ予防による効果について ーNPO法人全国ストップ・ザ・ロコモ協議会からの一考察ー

久保谷 康夫

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ロコモとその意義

泉田 良一(仁生社江戸川病院整形外科)
第55回関東整形災害外科学会 さいたま市
基調講演 ロコモティブシンドロームの克服に向けて
抄録より

ロコモティブシンドローム(以下ロコモと略す)は、運動器の障害によって移動能力が低下した状態で、進行すると要介護になる危険性が高まると定義されているが、27項目のロコチェックで判定し、予防のために開眼片脚起立とスクワットからなるロコモーショントレーニングを行うようデザインされていた。
しかしロコチェックの陽性率が50代以前では低いこともあり、若年のうちから予防を促すという意味合いでは響きが薄いきらいがある。そこでその欠点を解消するために、2013年に立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25(25項目のアンケート)の3項目からなる新たなロコモ度テストが追加された。
これによりロコモが本来的に持っている予防的概念という側面を強化することができたが、もとより複雑極まりない運動器の障害を一義的に定義づけ評価しようとする試みは整形外科学(運動器科学)の根本命題に触れる問題であり、ロコモの提唱によりその糸口が見えてきたとしても、いまだその緒に就いたばかりということができる。言い換えると、ロコモも確定的ということはできず、今後も進化発展を続ける、或いは進化発展を続けていかなければならない。
一方運動器の健康寿命の延伸という本来的な任務からいえば、整形外科医は永続性から離れて、人間の寿命という限定的な時間軸の中で実際的な議論に身をゆだねることができる。ここでは取り敢えずであっても要支援・介護という物差しによる評価分類が可能である。
以上述べてきたように、「ロコモ」は一般社会に向けては運動器の重要性をアピールするためのツールとして、そして運動器のパーツごとの治療学に邁進してきた整形外科医にとってはもう一度総合的な立場に視点を戻して、総合的かつ包括的に考え直すための拠りどころとして機能していくことが期待される。
我々の前には一石が投じられたのだ。

ロコモについて(上級編)

佐藤敏信日医総研主席研究員(前厚労省健康局長)監修の講演用スライド原稿です。
スライドは以下のサイトよりご自由にダウンロードの上ご使用ください。
(医師会・他科医師講演用PPT30枚/ダイジェスト版19枚)

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超高齢社会における健康寿命の延伸は国民全ての願いです。
そうした中で、「ロコモ」とその対策がどういう意義を持つのかを説明します。









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まず、我が国の死因別死亡数とその割合の図です。これまではこの図をもとに、がん、心臓病、脳血管疾患などの生活習慣病を中心的な課題と位置づけ、対策を進めてきました。しかし、これからは、平行して「ロコモ対策」を進める必要があります。その背景や意義について述べます。





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我が国の高齢化率は2013年25%と、2005年以後、世界一の超高齢社会となっています。
ここから,健康寿命に影響を与える要因をみていきます。

健康寿命は、男性70.42歳、女性73.62歳です。







その定義は「自立して健康に生活できる年齢」。これは介護度では、要支援者に至る前の状態を意味しています。 これは我々が提唱した「ロコモ」の定義である「自立した歩行能力を有する状態」ともほぼ整合しています。

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それでは健康寿命に影響を与える要因、つまりこれを短くする要因は何でしょうか。

要介護の場合は、1位が脳卒中、そして認知症、老衰と続いて、関節疾患、骨折・転倒です。







しかし、この骨折・転倒と関節疾患を合わせると17%、すなわち運動器に起因するものが要因の3位となります。
同様に考えると、要支援の場合は、運動器に起因するものが33%、つまり第1位を占めることになります。つまり、健康寿命という観点からは、運動器疾患対策が重要であるということが言えます。

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ここまで、健康寿命に影響を与える要因としての運動器疾患の意義、重要性を見てきましたが、医療や医療提供体制への影響も見てみましょう。












「患者調査」による年齢階級別傷病分類別外来患者数の「グラフ」を示します。死因別死亡でも述べましたように引き続き生活習慣病対策が重要ですが、60歳以上の年齢階級を注意深くみますと、明らかに運動器疾患が中心になり、生活習慣病全体をも凌駕していることがわかります。

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では、今後運動器疾患にどう対応していくか。我々は今、「ロコモティブシンドローム」という概念を提唱し、その対策を行うことが健康寿命延伸の鍵と捉えています。









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高齢化による運動器の変化について簡単に説明します。
筋力低下は、50才頃から始まり、60才から急激に低下すると言われています。











年齢とともに、特に体幹と下肢の筋肉が衰えます。また、「つまづき易くなる」のは筋力の低下ではなく「バランス能力」の低下によるものです。
すなわち「足が上がらない」のではなく、体の不安定感により無意識に足を上げない「すり足」になっているのです。

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高齢化により、筋力の衰えとともに平衡機能が低下し、とりわけ起立や歩行が困難になります。それらの状態は、既存の疾患として診断できる場合もありますが、通常は、高齢化に伴って各種の運動の機能の一部または全部が低下した状態と考えるのが適当です。







これらを総称して我々は「運動器の障害により歩行・立ち座りなどの移動機能の低下をきたした状態」とし、「ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)」という概念で捉え、その対応を考えるべきとしました。

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今後、健康寿命の延伸のためには、「要支援」の4割を占める運動器疾患、ならびに「要支援未満」の「ロコモ予備軍」、これら両群への対策が必要になります。
そのためには、骨粗鬆症への対応を含め、
1.「転ばない」
2.「転んでも折れない」
3.「折れてもまた歩ける」
体をつくることが重要です。



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そのためのロコモーション・トレーニング(ロコトレ)の実際について説明します。










膝や腰への負担が軽く、安定性も高く、家庭でも簡単にできて、先ほどの3つの目的を達成するトレーニング法として、我々は、「開眼片脚起立」と「スクワット」、この2種類の運動を推奨しており、総称して「ロコトレ」と呼んでいます。
「開眼片脚起立」は左右1分づつ1日3回行う訓練で、これは53分の歩行に相当するといわれています。極めてシンプルで安全かつ優れた運動療法といえます。

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「スクワット」は、洋式便座に腰を下ろすイメージで、ゆっくり・じっくり行います。

おもに「大殿筋」「大腿四頭筋」「ハムストリング」「前脛骨筋」など移動能力に必要な下肢の筋力の訓練に有効で、使っている筋肉を意識しながらおこなうと、より効果的です。





支えが必要な場合は、充分注意して、机に手をついて、腰を浮かせるようなつもりの動作をゆっくり繰り返すだけでも効果は得られます。
これらを毎日続ければ、筋力の維持向上とともに、折れにくい骨にする効果も期待できます。

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個々の高齢者に「ロコモ」の考え方を理解していただくためには専門家の助けが必要です。
SLOCが養成する「ロコモコーディネーター」をご紹介します。








2017年度末までに、要支援対象者に対する介護サービスが市町村事業に完全移行することが決定しました。各自治体では「ロコモ」予防体操の住民への普及啓発を目的に、ボランティアを対象に、現場で直接予防体操等を指導する「指導員・普及員」の養成を独自に進めていこうとする動きが始まっています。

われわれは、現場での「ロコモ」予防活動に携わるボランティアなどの養成、「ロコトレ」指導ならびに自治体との間に立って派遣などの調整役(コーディネート)を担うロコモコーディネーターの養成に取り組んでいます。受講資格は医療系・介護系の有資格者などとしました。2014年は6月浜松市、12月宮崎で開催され、計269名の「ロコモコーディ ネーター」が誕生しています。

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ここで「ロコトレ」の効果を具体的なデータで示します。












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そもそも、高齢者に「ロコトレ」などのアプローチを全くしなければどういう経過をたどるでしょうか?
平成21年 東京都「運動器の機能向上マニュアル分担研究班」の報告によると、「要支援1」相当のロコトレ未実施1,000人を1年後に再評価したところ、61%が改善もしくは維持で、39%が悪化という結果でした。



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平成19年から23年、藤野整形外科医院外来で運動器不安定症と診断された患者さんのうち、要支援1から要介護1に認定され、かつ通院あるいは通所リハで「ロコトレ」を1年以上実施している患者さんを対象に、追跡調査を行いました。








*対象は129名(男25・女104)
*年齢男女とも78歳
*開始時介護度 要支援1 66%・要支援2 28%
・要介護1 6%
*運動器不安定症の原因疾患
腰椎疾患 43%・変形性膝関節症 36%
*運動器不安定症プログラム
1.開眼片脚起立訓練 2.スクワット 3.セラバンド体操

「要支援1」85人は、「ロコトレ」を開始して1年目で64人75%が維持、21人25%が悪化していました。

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「要支援2」36人中、「ロコトレ」を開始して1年目で33人92%が改善または維持、3人8%が悪化していました。











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同様に「介護1」8人では、「ロコトレ」開始1年後、悪化例は1例もありませんでした。













以上より、介護度に比例して「ロコトレ」が有用であるという結果が得られました。

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最後に、そうした効果が最終的に医療や介護の費用へどれだけの影響を与えるのか、極めて粗い試算ですが、検討しました。










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これまでに述べたように「ロコモティブシンドローム」の原因となる病態や疾患は様々であり、それらを個々に積み上げて計算することもできますが、それでは複雑になり、しかも誤差も生じるので、ここでは簡単に大腿骨頚部骨折に絞って費用を計算することにしました。







骨粗鬆症財団の調査によれば、年間の大腿骨頚部骨折患者数は現在では約20万人と推計されています。大腿骨頚部骨折の手術・入院費用は約200万円, 介護保険制度の単位から算出した最も介護度の低い要介護1の年間介護福祉施設サービス費用は約240万円と推定されます。
一方大腿骨頚部骨折の予後については, 骨折により自立すなわち歩行可能な者から寝たきりあるいは要介護となる者は約40%と推測されます。40%8万人の自立者の骨折患者さんのうち、さらに40%の方の「要支援」もしくは要介護への移行を阻止できれたとすれば、その医療・介護経済効果は年間3,600億円×0.4=1,500億円と推計されます。

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「ロコモ」はすでに行政施策に組み込まれていますが、いまだ充分とは言えません。
今後は「健康日本21」や市町村介護予防事業の中でその充実を図るべきであり、我々は「ロコモコーディネーター」の養成を通じ、今後煩雑を極めると推測される事業の流れを円滑に進める手段の一助になればと願っています。







更新日2016/10/28

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